契約は守られてこそ契約だ

 3月26日、ミネソタ晴れ

 さむーい、日差しは強いが気温は低く風も強い。

 今週は、毎朝7時過ぎから仕事をはじめ、休憩はほとんどとらずにぶっつつけで実験していた。

 結果はまずまずでこれで先に進めるだろう。

 だた、今週は合計48時間仕事をした。毎日約10時間ぶっつつけで働いたわけだ。

 さて、私はミネソタ大学から100%の条件で雇用されている。すなわち、週40時間の労働が求められるわけだ。先々月、中ボス経由で管理職の某人物が私に100%の貢献を期待していると聞かされて激怒したが、それ以降、自分でタイムカードをつけるようにしている。結局のところ私たち研究者の実労働時間をだれも把握していないことが分かったので、それを記録として残しておく必要性を感じたからだ。ちなみに最近はほとんどのミーティングに参加し自分の思う所をしゃべりまくっている。

 今週末も当然、緊急の呼び出しがある可能性があるわけで、以前だったら緊急の呼び出しを断ることは事実上困難であった。今週も週末のオンコールリストを作成している人物(スーパーバイザー)から週末の予定をメールで聞かれたので、”今週は48時間働いたがどうしたらいいと思う?” と返信した。すると、”分かりました。週末はよく休んでください。来週は仕事に余裕があると思うので今週余分に働いた分、休みをとってください” と返ってきた。

 うーん、アメリカ。契約社会アメリカ。

 具体的な実労働時間という数値を示せばオンコールリストを作成しているいわゆるスーパーバイザーと呼ばれる立場の人間も管理職のやつらに適切な説明ができ、私を激怒させるようなことを言わせることもないわけだ。

 めでたし、めでたし。

 ただ私としては緊急の呼び出しも当然、芸の肥やしになるわけで行きたい気持ちは強い。契約で求められた条件を超えたとしても。しかし、それをしてはいけないことをこの1年間で理解した。

 なぜか? 説明しよう。きわめて簡単。周りが迷惑するのだ。私たち日本人研究者のように契約以上に働くのが当然の国、残業して何ぼの国、日本で生きてきた人間が日本で働いていたのと同様に働けば、アメリカ人たちが迷惑するのだ。いや、アメリカ人だけではない、他国から来てこの職場で働いている人たちにも迷惑がかかる。

 アルマダは夜でも休日でも働くのになぜおまえたちは働かないのだ!!  と。

 以前、こういわれたことがある ”日本人はお昼ご飯を食べなくても、休憩時間をとらなくても働き続けられるんですね”

 当時はこの発言を好意的に受け取っていたが、今になって考えてみると、”迷惑だからやめてくれ、昼食はアメリカ人と同じようにゆっくりとのんびりととってくれ” と言われていたのではないかと思う。

 例えば、私が昼食もとらずに働いていると、昼休みをとっておくれて職場に戻ってきた同僚が非難されていたのだった。

 ”郷に入れば郷に従え” とはこのことであろうか。

 身を粉にして働くのが美徳の国、日本。私はそんな日本が大好きだ。

 しかし、それをアメリカでしてはいけない。もしも契約がそうなっているのならばそうすればよいが、私のように契約で週40時間と労働時間が限定され、それ以上働いても時間外手当が出ないような立場ではそれはしてはいけない。事実、私と同じ立場の人(ただし現地人)はどんなに仕事が忙しかろうが、忙しく働く同僚に別れを告げてPM2時やPM3時に堂々と帰宅し、週の労働時間が40時間を超えないように調節している。

 さて明日は土曜日。 Have a nice weekend!