信号無視の文化
5月12日、ミネソタ曇りのち雨
寒くて暗くて・・・・・、やな天気。
朝、車を職場の駐車場に停めて、駐車場から出る。するとそこには交差点があり歩行者用信号もある。
しかし、だれもこの歩行者用信号を守らない。決して壊れているわけではないが、車が来ないときは決まってみんな信号無視する。
以前まではためらいがちに私も無視していたので、周りの人よりも一瞬遅れてわたり始めていた。でも最近はこの信号無視の文化にもなれ、どのタイミングで歩き出せばよいのかが分かってきた。車の流れを見ながらすっと渡り始めるのだ。
(ミネアポリスキャンパス周辺道路では信号無視している人が多数いるのでドライバーの皆さんは注意が必要)
(ミネアポリスキャンパス周辺道路では信号無視している人が多数いるのでドライバーの皆さんは注意が必要)
さて、今週は今日までデスクワークの日だった。この職場では会議が週に2,3回あり私も最近は参加するようにしている。今週も月曜日に会議がありそれに出席していた。
その会議というのが非常にくだらない。英語でいえば ”annoy” というか ”frustrate” というか・・・、日本語でいえば ”むかつく” のだ。
会議のための会議。実験内容を検討するわけでもなく、終始くだらない内容で会議の時間は過ぎていく。管理職の皆さんはこのくだらない会議で満足なんだろうが私にとっては苦痛な時間でしかない。
いったいなんなんだこの会議は・・・・・、研究所が巨大になると会議もこんなものになってしまうのか・・・・・・・。
てなわけで私の我慢も昨夜限界に達した。
娘たちが見ているアニメのキャラクターのまねをして言わせてもらえば、”堪忍袋の緒が切れました” ってところか。
これまでためていた実験データの解析を今していて、ここ数週間の実験がなぜうまくいったのかの検討が私なりにできたのでそれを他のスタッフと共有し検討するべきだろうと。そう思った私は昨日の深夜、全員に向けてメールを一斉送信した。
”私のデータと分析結果を明日見せるから、ミーティングの段取りをしてくれ!!”
とうとうミーティングを自ら主宰するようになってしまった。そうでもしないとこの職場は正しい方向へと進むことができないと判断したからだ。
すると大ボスからすぐに返信が来た。
”非常に楽しみだ。明日の正午から1時にかけてなら私も出席できるのでよろしく。”
そして今日、昼過ぎからミーティングが始まった。
出席者は12名。いやー、集まりましたな。昨夜召集をかけたのにこんなに来てくれるとはうれしいかぎりじゃ。
さて、私が解析したデータを見せ、なぜ実験がうまくいったかを説明。すると大ボスがしゃべり始めた・・・・・・、いつもの事だが非常に話が長い・・・・・。そしてよく脱線する。
その大ボスの話をうまくさえぎりつつ私の解析の結果とさらにそこから得られる事実および仮説を説明するのに2時間もかかってしまった。
まだまだ話したいことは山ほどあったが、予定時間は1時間だったので2時間たったところで終了とした。
Good observation, Good science. と最後に言っておいた。(ちなみにこれは映画”Avatar”に登場するサイエンティストのセリフのパクリである)
大ボスも参加者も絶賛してくれたのでよかったよかった。
素晴らしい解析結果と仮説だと。
実のところもっと素敵な仮説があるってのに・・・・・、まあこちらの仮説はもうしばらく温めておこう。
仮説ってのは簡素で美しくなければならない といつも思っている。
そしてその仮説を説明するためにはときに他の研究者の仮説を否定することになる場合もある。実は今日説明した私の仮説は中ボスの仮説とまったく正反対のものだった。しかし、これまでの実験で彼の仮説は”どうやら正しくないらしい” という事も本人は理解していたのでおとなしく私の仮説を受け入れてくれた。
今日、このミーティングをいち研究者の私が強制的に開催したのはややもすると”信号無視”と受け取られなくもない。だが、信号無視してでも自分の考えを人に伝えなければならないときもあると信じている。特にアメリカでは。そしてその信号無視がこの巨象(巨大研究所)を正しい方向へ導くであろうことを期待している。
暴走する巨象にまたがって振り回されるのにはもうあきたんだよ。
今日はよく眠れそうだ。