初夏のジテ通、電動自転車に勝つ
5月23日、曇り
暑い。
外気温は20℃程度。
もうこれ以上、暑くならないでくれと思うほどになってきた。
朝、いつも通りにTrekにまたがり出勤する。
のんびりこげはそれほど汗をかく事は無いが、巡航出来る限界の速度(35-40km/h)で毎日走っている。
そんな状態で走り続ける。
そして職場に到着するとどうなっているか。
駐輪場にロードバイクを停めて歩き出す。
汗が道路に落下する。
このままでは病棟朝回診しても汗だくで困るので、当直室のシャワーを浴びてから仕事を始めるようにしている。
よって、シャワーを浴びる為にこれまでより10分早く家を出る必要がある。
先日、若い先生とこのジテ通の話をしていてこう言われた。
”だったらその分(10分)ゆっくりこいでくれば汗もかかずにシャワーを浴びなくて済むんとちゃいますか?”
その通りです。でも自転車馬鹿は全開でこぐんです・・・。どんな時も・・・。
そう、下り坂でも全開でこいでます。
下り坂だとこぎませんか? 普通・・・。
そして今日は水曜日なんだけど、もう金曜日かと思うほどの疲労感。
連日深夜まで手術をしている。
朝から数件の手術をこなし、深夜0時、すべての”予定手術”を終える。
その後、入院患者の経過を確認する為に外科病棟にあがり、電子カルテにログインする。
消灯された病室にこっそりと入り、ドレーン排液の性状を確認したり、必要であれば寝ている患者を起こして話を聞く。
看護師詰め所に戻る。
必要な指示を出して、医局に戻る。
時間は午前1時。
朝ご飯を摂取して家を出てから、晩ご飯どころか、昼食さえも摂取していない。一体何時間食餌摂取せずにこの体と脳は働き続けているんだろう・・・。
その秘密をご紹介しよう。
それは手術に入る前に、Cokeを一気飲みしているからである。
これぞ、本当のCoke guy!
さて、そんなこんなで仕事が終わったのが午前2時。
もう眠い。
何時間も立ちっぱなしで手術しまくって脚も腰も肩も痛い。
年を感じる今日この頃。
さて、寝よう。
そう、別荘(=病院の仮眠室)で。
明日も朝から仕事だ。いや、朝からじゃなくてこの夜間にも緊急手術があるかもしれないし。
医局に戻り、仮眠室のドアを見つめる。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
!!!!!!!!!!!!!!!!
全室使用中・・・・・・・・。
まじ?????
どうしよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ソファーで寝るか・・・、床でそのまま寝るか・・・。
それとも仮眠室を使っている他の医者と小さなベッドで添い寝するか?????
こんだけ疲れてりゃ、道路でも眠れるぜ。男との雑魚寝でも・・・・・。
でもな・・・・・・。
帰ろう、家に。
あの激坂をヒルクライムして。
滝汗で登りきる。
帰宅。
3時間寝る。
起床。
出かける。
回診、外来、手術、回診。
そして、再び深夜。
帰宅、睡眠、起床、出勤、回診、手術、回診、帰宅。
起床、出勤、回診、外来、外来、会議、回診、激闘、帰宅。
そして今に至る。
そんな自転車馬鹿人生。
今日は、勝った。
自宅手前、約2kmある坂を登り始める。
そして前方12時方向に発見!!!
電動アシスト自転車!!!
火がついた。疲労が蓄積したこの心と体に火がついた。
点火!!!!!
行け!!! 我が身よ!!!
激闘の結果、あの坂を悠々と電動自転車で時速16km/hで登っていくおばちゃんを時速20km/hで追い越した。
おばちゃんを追い越し、最後に待ち受ける勾配18%の坂を登る頃には心拍数175bpm。
三途の川を見たような気がした。
”最期”は、ダンシングで登りきる。
喘ぐような呼吸。
酸素が足りない。
酸素飽和度低下。脚には乳酸が蓄積し、体は言う事を聞かない。
呼吸が出来ていない? このままでは死ぬ? さらに大きく呼吸をする。
しかし、十分な酸素を取り込めた気がしない。
もうひと呼吸。
窒息・・・。
だめだ・・・。
死ぬか・・・。
いや待て、死にはしない、まだ死んでない。
今こうしてロードバイクにまたがり前に進んでいるだろ!
そう、今を生きているだろ!!
電動自転車に正統なるロードバイクで勝っただろ!!!
死の恐怖を感じるってことは生きている証拠だろ!!!!
この恐怖、この苦痛、それを感じ、理性をとり戻す!!!!!
最大心拍数で登りきる激坂。
最高です。
そう、今を生きている。