なまぽって

 6月19日、雨

 つゆっぽくなってきました。

 朝から雨。

 でも、ずぶ濡れになってもジテツウ。

 自らを律するため。

 自然を感じるため。

 いろんな理由がありますが、雨でもジテツウ。





 この医者って仕事をしていると、なまぽってどうなの? って思うことが頻繁にあります。

 そう、生保です。

 生命保険ではありません、生活保護です。


 身なりも良くて健康そうででもどこか品が無くて、電子カルテの保険の欄を見てみると”生保 0%”と書いてある。

 生保=生活保護

 0%=自己負担全くなし。 の意味です。




 え!!! なんで貴方が???

 既往歴を聞いても肥満や高血圧などのいわゆる生活習慣病以外の病気なし。

 なんで???

 どうして、仕事できないの???

 え??? その爪ずいぶん奇麗ですね・・・。

 え??? ジェルネイルって言うんですか、それ・・・。

 心の中でのつぶやき ”へー、生活保護費ってそういうことに使えるんですね”

 それと、その時計、素敵ですね。

 え!!! O万円するんですか!!!

 へー、すごいですね・・・。

 タバコもずいぶん吸われてますね。1日2箱!!!

 1箱400円で計算してみましょうか。

 1ヶ月でおおよそ2万4000円ですね!!!

 ずいぶん羽振りがいいですね。

 お仕事何されてます?

 え、してない・・・。

 そうですか・・・。

 富の再分配が国を滅ぼすってこういうことですね。

 生存権???

 へー、そんな法律あるんですね。

 私どもは両親や祖父母から ”働かざるもの食うべからず!” と幼い頃から教育されてきてまして。

 世の中にはさまざまな価値観が存在するんですね。







 半年ほど前、私の患者さん(癌の術後で外来フォロー中だった)が自宅で急死した。

 その方は、貧困生活を送る後期高齢者だった。

 生活保護を受けてしまえばタダで、無料で、自己負担金ゼロで、世界最高の医療が受けられたのだが、その方は生活を切り詰め、節約し体は痩せ細り、病院への受診も必要最小限にし、とある疾患(内科的疾患)の治療を十分に受けていなかった故の急死だった。

 急死する前、その方から、病院に電話がかかってきた。そして、私に相談したいことがあるとのことだったので、電話をつないでもらった。

 そして、その相談を受け、病院を受診するように強く勧めたのだが、その方はこう言った。

 ”支払いが出来ないので病院や先生にもご迷惑をおかけします。なので・・・。私にも誇りがあります。人様に迷惑をかけてまで生きながらえようとは思いません。先生、ありがとうございました。こうして電話で相談に乗っていただいただけでも・・・・。ありがとうございました。”

 病院を受診してしまうと、数百円の、たった数百円の支払いがある。だったら、数十円の電話代で済む電話相談と言う手を使ったのだった。

 内科の病気なのに外科医の私に相談したのはなぜなのだろうと未だに思う。

 その数日後、その方は自宅で急死した。

 そして、その御遺体が救急車で搬送されてきた。

 すでに死亡から時間が経過し、何も出来ることはなかった。

 ただ私は、その御遺体の前で、手を合わせご冥福をお祈りしたのだった。




 生活保護で汚く太った患者。

 清貧を守り、自尊心を失わずまるで即身仏のようなお体でお亡くなりになった患者さん。

 どちらが美しい???

 あえて言うまでもないよな。