車上荒らし(経過報告2)

 8月31日、ミネソタ快晴

 そろそろホントに寒くなってきました。自転車で走っているとちょうどいいぐらいの気温です。自転車に乗るには最高の季節でしょうか。



 さて、車上荒らしの経過報告。今回は、アメリカで自動車を修理するまでの流れを記述してみたい。

 8月28日(金曜日)、保険屋のクレームアジャスター(事故処理担当者)からアプレーザー(査定者)からの連絡を待てといわれて、結局アプレーザーから電話がかかってきたのは夕方。 ”今日は都合が悪いので月曜日にまた電話します” と言われる。また待つのも嫌なので ”なんだったら今からそこまで行こうか?” と聞くと ”月曜日、朝一で電話するので、月曜日にしてください” と言われる。おいおい冗談よしてくれよ、また昼間、駐車場にいたら変なことを言う無神経なやつに会うかもしれないじゃないか。

 Hertzのお兄ちゃんがすぐ電話をくれたのとは対称的な対応に感じられた。

 事件があったのが25日深夜、事件が明るみになったのが26日昼。いろんなところに電話をかけ、電話を待ち、車を動かせる程度にまで掃除したりとしたが結局この週では車を修理に出すことが出来なかった。一日でも早く車を直したいというせっかちな日本人がアメリカ時間で生活している彼らの生活習慣を乱すのもこれ以上は良くないと判断し、私もアメリカ時間に可能な限り身をゆだねることにした。

 そして今日8月31日(月曜日)、予定通り朝一でアプレーザーから電話がかかってきた。AM10時に伺いますとの事。結構まじめな性格の人のようで、AM9時55分に再度電話がかかってきて ”あと5分でそちらに着きます” とのこと。うーん好感もてますな。

 ほぼAM10時に、真っ白なシボレーのインパラに乗ってその男性は到着した。挨拶を済ませ、車を見てもらう。”私は査定のプロだからすぐに分かるけど、これはKidsの仕業だよ。いま夏休みだから車上荒らしが増えてるんだ、学校が始まればまた件数は減るんだよ”。 私も同感である。

 かなり細かいところまで彼は見てくれたが、私の主張するシフトレバーおよびその周辺の傷がどうにも納得いかない様子。”この傷は今回の犯罪ではつかないと思う” と言われる。 これは予想していた。確かに不自然な位置に傷がついているのだ。しかし、なぜそこに傷がついたか私には分かっていた。

 防犯カメラの映像、車両の損傷の状況、車内に残る犯人の血痕、盗難されたカーナビおよびiPodの位置、これらを全て把握していないと説明が出来ない傷なのだ。

 今年の4月にアメリカで生活を始め、最初の1ヶ月間、A先生がいてくれたが、それ以降は全てアメリカ人やインド人と一緒に仕事をしている。私の職場に日本人はひとりもいない。会話は当然全て英語で、アメリカ人も日本人とは比べ物にならないくらい討論好きだが、特にインド人勢は討論を非常に好む。”討論に参加しない=仕事ができない、知識がない、判断力がない” とみなされる職場である。相手を納得させることがいかに重要かは身をもって知っている。正しいことを述べていても相手に伝わらなければ無意味、そんなとこだ、アメリカって。日本にいたら ”つべこべいうなよ!”ですむことも詳しく説明して相手を納得させなければ仕事は前に進まない。


 さて話を今回の犯罪に戻そう。

 犯人は窓を破り、ドアを開けることなく (これはドアを開けたら防犯装置が発砲して、けたたましいアラームがなるためと、ロックの解除レバーが特殊な位置にあるため犯人はレバーを見つけられなかったのであろうと推測する)、窓から車内に身を乗り入れて車内のものを盗んだこと。シフトレバーには犯人の血液が大量にべっとりと付着していたこと、シフトレバー周辺にも血液が付着していたこと。シフトレバーの血液は私が最低限運転できるようにふき取ったこと。しかしレバーには今も一部血液が残っていること。

 以上を説明。

 犯人は助手席の窓を破り、この時、左上肢に外傷を負う、そしてそこから身を乗り込ませ左手でシフトレバーを握って体を支え、ダッシュボードにおいてあったカーナビを右手で盗む。そして次に右手をシフトレバー周辺に置き、怪我をした左手でセンターコンソールを開け中を物色した。この時、怪我をした左手から血液が落下しセンターコンソール周辺にも血液が付着した。そして犯人の手にはガラス片が付着しており、この左手でシフトレバーを強く握ったためシフトレバーにも傷がついた。

 以上の推論をアプレーザーのおじちゃんに説明すると、あっさりと納得してくれた。私の説明をすぐに理解してくれるとは ”やっぱりこやつプロだな” と思った。

 さて、査定も上記のように順調に終わり結果発表のお時間です。

 修理費用、3000ドルオーバー!!!

 よくもまあここまで壊してくれたもんだ。多数の部品交換が必要となってしまった。

 査定終了後、アプレーザーが私に消毒薬のゲルをくれた、これで手を消毒しろと。”心配のしすぎだと思うが、なにがあるか分からないから、子供たちとか他の人には絶対に車に触れさせてはいけないよ” といいつつ。

 修理してくれる車屋のあてはあるのか聞かれたが、知り合いが近くのAbra body shopで修理したらしいと応え、もしそこでこの修理を完璧にしてくれるなら頼もうと思うと伝えた。するとアプレーザーはそこは懇意にしているからすぐに電話連絡を入れておくよといってくれた。

 妻と一緒に車2台(修理をするアルマダと帰りの足に使うためのマリブ)ですぐに出かけた。Abra body shopは家から5分ぐらいの距離にある。

 受付の女性に修理の依頼をし、車を見てもらった。

”いったい何があったの?”、”アパートの地下駐車場で車上荒らしにあったんだよ”、”何台やられたの、あなただけ?”、”二日続けて合計10台やられたんだ”、”え!そんなに!”
(アプレーザーからの電話連絡はこの人には伝わっていないようだった。おそらく上位の職員に伝わっているのだろう)

 車の中を見てもらう前にこう言った ”車内には血液が残っているから気をつけてね”。するとその血液を見た女性は ”あ!すごい!これはBioね!Bio carね!もう分かったわ、この車は新車同様だったはずだから、新車同様に直すわ” と。

 え、俺の車! Bio car? どんな車なの? Bio carって?。 bio燃料で走る車じゃないし、燃費は悪いし・・・・・。直訳すると”生物学 車”になってしまうが、この女性はbiohazardous car(生体に有害な物質を含む車)と言いたかったのだろう。

 その結果、アルマダは修理の前にbio-cleanという処理がなされることとなりました。要は血液を完全に除去して車内を消毒するって事でしょう。



 週が開けた月曜日、やっと修理に出すことが出来た。軽微な損傷だったらもう直っていたと思うが、修理期間の予測をこの女性に聞いたところ1,2週間といわれてしまった・・・・・・。すまん、アルマダ。そう!君は無敵艦隊だったはずだ。君が元通りの雄姿を見せてくれる日を楽しみにしているよ。

 そして今日も各方面の方々からお悔やみの言葉をいただいた。この場を借りて感謝申し上げます。