歴史は繰り返すのか、これが人の業なのか

 12月26日

 さて、今日はとても悲しいことがあった。

 ひさびさに、とてつもない不快感を感じる出来事が。


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 昼食を某ショッピングモール内のフードコートで食べていた。家族そろって。そして会話をしながら、食べ終わり席を立とうとする直前、わずかであるがこういう声が聞こえてきた。

 "Shut up!, Yellow!"

 私は驚いて、声のする方向を向くと黒人の中学生ぐらいの女の子二人組みであった。

 先ほどの言葉は、直訳すれば ”黙れ!黄色人種め!” である。

 私たちが日本語で会話していたため、英語は通じないであろうと思って言ったような表情だった。私を見てにやにやと笑っている。

 残念ながら、はっきりと聞こえてしまった。

 しかし、あえて聞こえなかった振りをした。中学生の女の子相手に腹を立てても仕方がない。もっとも、腹が立つのではなく、私の中には寂しさが湧き上がってきた。

 黒人の歴史は皆さんもご存知だろう。白人によって長期にわたって奴隷として扱われ、現代においても差別は表向きは無くても、影では根強いものがある。

 私はオバマが大統領となったことを非常に喜んでいた。大統領選において彼の言っていることは納得できることが多かった。(現在はそうでもない)。そして、暗い歴史の中で耐えてきた黒人が、笑顔で胸を張って生きていける社会が来るのではないかと期待していた。

 私は人種差別が大嫌いだ。人種にかかわらず、人間は本当の実力を評価されて社会においてその価値を認められるべきであると考えている。時々、インド人に苦言を言うことがあるが、あれは人種差別を意図したものではなく、国際社会において生活するうえでの彼らの国民性の評価をしているのだ。もちろん、インド人だからと言って邪険に扱ったことは全くない。

 私は黒人の歴史を理解し、そしてよりよい環境が育つことを希望している。しかし、今日は、その黒人の女の子たちに上記の言葉を浴びせられた。軽い気持ちで言ったのかもしれない、しかし、彼女たちの心にアジア人を差別する意識があることは明白。

 歴史は繰り返されるのであろうか? 差別からの開放を願い活動していた黒人のなかにもアジア人を差別する意識が潜んでいるというのだろうか?

 家族の中でこの差別発言が聞こえたのは私だけだった。それだけ小さな声だった。子供たちが聞いていなくてよかったと思う。最近、子供たちは英語ができるようになってきている。長女も次女も、現地の子供たちに囲まれ、そして彼らの輪に加わり、必死の思いで意思の疎通を図ろうとしている。


 先日、次女が夜中寝る前に寂しそうな顔をして私のところに相談にやってきた。

 ”おとうさん、プレスクールのOO先生が、私のことを ”ばか” っていったんだ。私は馬鹿なのかな?”
 ”え!、OO先生は、どんな状況で英語でなんていったんだい?”
 ”私に ”Silly!” って言って走り去っていったんだよ”

 このSillyの意味はさまざまであるので、この先生がいったい何を意図して発言したのかは分からない。まさか本気で馬鹿呼ばわりしたとは信じたくないが、この言葉を聞き取ってしまった次女は非常に悲しんでいた。


 さらに、こんなこともあった。

 私がミネソタに赴任してすぐ、ある中堅のスタッフに会い挨拶をした。彼は40代の白人男性なのだが、私に向かってこういった。

 ”アルマダは日本から来たんだよね、”Banzai” の国から来たんだね” といって3回両手を挙げて、Banzaiと3度言った。

 私たち日本人は現代において、祝賀のときや送別のときに万歳という言葉を用いる。しかし、アメリカ人はそうは認知していない。

 Banzai = 特攻(Banzai Attack) である。近年も第2次世界大戦を題材にした映画において日本軍兵士が万歳と言ってアメリカ軍艦に爆弾を抱えた零戦で特攻していったり、陸戦において日本軍兵士たちが、アメリカ軍の弾幕に向かって、万歳と言って突撃していくシーンが描かれている。

 この中堅スタッフの真意はあえて聞かなかった。しかし、私は笑顔で応答することはしなかった。

 さらに、アメリカ人の若手白人外科医Mにこう言われたことがある。韓国出身の女子大生と私に向かって、私たちアジア人のことを”Agent”と呼んだのだった。このMは私があまり英語が聞き取れないと思い、かなりの頻度で遠まわしに差別発言を繰り返す男である。彼は私たちアジア人のことをスパイ(諜報部員)と呼んだのだった。

 以上に述べたように、自由の国アメリカといわれながらも、差別主義者は多かれ少なかれ存在する。

 あまり、アメリカの現地人と接することなく生活していればこんなことは全く感じないだろう。そのほうが幸せかもしれない。しかし、私は日本人ただ一人の職場で働いている。否が応でも彼らとの意思疎通を図らなければならない。私が接するアメリカ人のほとんどが非常に親日的で、日本人外科医を高く評価してくれている。しかし、時として嫌な言葉が耳に飛び込んでくる。

 日本にずーっと暮らしていれば、こんなことは感じることも無いだろう。

 日本は日本人の国であり、日本人の為の国である。

 しかし、今の民主党政権が進めていることが実行され、大量の中国人が日本に入ってきたらどうなるのだろうか?

 おそらく、日本国民の決して少なくない人々が中国人差別を始めると憂う。 今、日本に住む、在日朝鮮人、在日中国人の人々も現在に至るまでも日本人から差別を受けてきたであろうと思う。今、私たちアジア人が、アメリカで差別を感じるように。

 避けられる不和を生まないことが肝要だと思う。そういった意味において、私は民主党の政策の一部に強く反対させてもらう。

 そして今、アメリカでは ”アメリカ国内産テロリスト” の問題が明るみになっている。

 興味のある方は、ぜひ次の新聞記事を一読して欲しい。

 Somalia Terror Group's Minnesota Outreach
As Many as 20 Young Somali Men Disappear from Minneapolis, 3 Killed in Somalia; Are They Terrorists, or Victims?

 ここミネアポリスにはソマリア人が多く住んでいる。これはアメリカの政策によるものらしい。
 ソマリアの内戦のときに幼児だった子供たちが、難を逃れてソマリアからミネアポリスへ避難してきた。そしてその子供たちが今度はミネアポリスから姿を消し、ソマリアの地を再び踏んで、そしてテロリストになるのである。
 この記事以外にもアメリカ国内産テロリストの記事はいくつもある。先日、デトロイトで飛行機爆破テロ未遂があったが、それに関連して、アメリカ国内産テロリストに関する記事がいくつか認められる。(デトロイトでのテロ未遂の犯人はナイジェリア国籍の男性であり、アメリカ国内産テロリストではないと思うが)。この爆破されそうになった飛行機はデルタ航空のもので先日、ノースウエスト航空と合併した航空会社である。とても人事とは思えない事件である。

 頼むからテロはやめて欲しい。無差別殺人はさらなる悲しみと憎悪を増幅することにしかならない。



 これから、私の子供たちも英語をさらに理解できるようになり、もしかしたら聞こえないほうがよかったことを聞き取ってしまうときが来るかもしれない。その時のために、子供たちにどのように差別について教育し、対応できるようにするかが親としての私の勤めであると思う。そして、私自身もこの問題をどのようにとらえ、どのように解釈し、消化していくかをもう一度考えてみたいと思う。

 私も、子供たちもアメリカ国民と距離を置いて暮らせば良いのかもしれない。しかし、それでは今ここにこうして暮らしている意味がほとんど失われてしまうから。

 そして、最後に。 日本人同士の間ではせめて事実を正確に把握し、お互いを理解し、決して事実誤認や思い込みに基づいていがみ合うことの無いようにと願う。

 来月には第3子が生まれてくる。これからも平和な世の中を保ってあげたい。