いいニュース、やな事実

 1月5日、ミネソタ晴れ

 今日もいい天気。

 今日、私のオフィスに見知らぬ若者がいた。なんと、新しいスタッフだった。

 みなが待ち望んでいた新人。さっそく、トレーニングを始めていた。トレーニングと言ってもインターネットでトレーニング用のサイトにアクセスし、セクハラ教育や研究にかかわるものの倫理教育、危険物の取り扱い等の新人教育をずーっと文章や動画を見ていくだけ。
 途中、彼は寝ていた・・・・・・。実践的ではなく、形式的な内容なのでくだらないのだが、新人教育をちゃんと行ったということがこの組織にとっては重要なのだ。くだらない、全く、くだらない。はっきりいってばかばかしい。が、やらなければならない。
 いずれにせよ、増員を得たことは喜ばしい。

 これがいいニュース。


 そしてやな事実。

 アメリカではPIと呼ばれる実験責任者がそれぞれの部署に配置され、何人かの人員を動かし実験を行っている。うちの中ボスがそれ。そんな彼と今日もすこしやりあわなければならなかった。私がまとめたデータをくれといわれたのだ。データを見せたること自体は特に問題はないのだが。
 このまとめたデータ、私が学会発表したり論文に用いるためのデータだ。

 以前こんなことがあった。当時、私がまとめていたデータに興味を示したPIがそのデータをメールで送ってくれと言ってきた。そうしたらその数日後、そのPIから全員に向けて”某学会に出すための要約を作ったのでみんなで査読して欲しい”とメールが送られてきた。なんと、そこにあるデータは私がまとめたものだった・・・・・・・・・。

 今日は”なぜこの生データを貴方に提供する必要があるのか”を聞いた。そうしたら適当でその場しのぎの嘘としか思えないような説明が帰ってきた。

 この研究者生活はPIによって大きく左右される。どんなに自分でやってもそれをすべてPIにスカッとインターセプトされてしまっていては結果として自分がやったことにはならない。

 実のところ、私は大ボスのやっていることに興味を抱き、ここに来た。この中ボスと仕事がしたくてきたわけではない。その存在さえ知らなかったのだ。 ところが私が大ボスと直接実験内容やデータに関して話をしようとすると、中ボスがその間に割って入ろうとしてくる。

 どうしたものだろう。

 このままだと、アメリカでした仕事が何の業績としても残せない。

 そして、最も私が気に入らないのが、嘘をついてデータを得ようとしていること。

 近いうちにこの問題を解決するすべを考えたいと思う。

 この状況、穏やかではない。

 今まで、これと似たような話を何度か耳にしたことがあったが、私が実際にそうなるとは思ってもいなかった。これは事故か。

 日本にいた頃、私を指導してくれていた研究室のボスは本当にすばらしい方だったなといまさらながら思う。