トヨタバッシング

 3月12日、ミネソタ

 今日もあめー。朝の外気温4℃、しかしなんだか寒い。薄暗くて雨が降っている。

 今日は久しぶりに実験の無い日だったのでデータの整理をしていた。自分たちが現在やっている実験のデータ、先日個人的に行った実験のデータ、そして3年以上前から蓄積されているデータの分析をしていた。

 確信した、私の仮説は正しいと。

 そしてそのことを同僚や中ボスに説明。全員納得。

 あとは先日猛反発した中堅のテクニシャンを説得すれば完了だ。

 これでこれ以上無駄な実験を繰り返さずに済む。そう確信した日だった。


 さて、巷ではトヨタの”意図せぬ急加速問題”がホットだ。先日、同僚にこう聞かれた ”あなたはトヨタの車のことをどう思いますか?”

 ”好きではない、なぜなら運転して面白い車を売っていないからだ。足は緩く、快適で運転していても面白くない車しかない。一般人でも買えるようなピュアスポーツカーを売っていないメーカーは嫌いだ” と答えた。

 実のところ、彼の知りたかったのはそんなことではなくて、トヨタ車の安全性についてどう考えるかを聞いたいたのだが・・・・・。どうもその後話を聞くと、奥さんが ”トヨタRAV4を買いたいと言っているのだけれど許可してもいいと思うか?” ってのが本当に聞きたい事だった。

 それほど、アメリカではトヨタが人気があるし、今回の問題で少数ながらも購入をためらう人がいることが良くわかった。


 そんなトヨタが今、反撃に転じている。

 はじめに言わせてもらおう。

 トヨタよ!がんばれ!決して負けるな!戦い続け、そして真相を明らかにせよ!

 事の発端は、トヨタ車が ”意図せぬ加速” を起こすと報告されたことだ。

 その原因を検索したトヨタは、フロアマットがアクセルペダルに引っかかりペダルが戻らなくなるからであるとした。さらに、アメリカ製のアクセルペダルが劣化によって戻りにくくなることがごくまれに発生するとして、リコールを行いアクセルペダルの交換をおこなった。そしてプリウスの高度なブレーキシステムの”仕様”を”不具合”として非難されてリコールを行った。



 トヨタ車の”意図せぬ急加速問題”、原因はフロアマットなのか?アクセルペダルなのか?電子制御システムなのか?

 はっきり言ってどれも納得がいかない。アクセルペダルがフロアマットに引っかかり死亡事故が起きた。これはある特定の事故に関しては納得いく説明だ。しかし、これまで報告されてきた”意図せぬ急加速”問題すべての説明がつくのか? ほんとうにそうか? そうでないとすればどうすれば本当の原因を見つけられるのだろうか? 上記の原因以外に何があり得るのだろうか? そんなことを最近考えていた。


 そしてすぐに、原文を読む。
Braking Bad The Newyork Times
 なるほどと思った。これなら”意図せぬ急加速”の説明がつく。ブレーキペダルを踏んでいると思い込み、アクセルペダルを踏みつけていれば、”ブレーキを踏んでも車がとまらない、加速し続ける!”ってのは当たり前のことだ。

 しかし、これを実証するのは困難だと思う。

 ただこれを教えて欲しい。

 意図せぬ急加速を起こした車のブレーキパッドはどうなっていたかを。

 なぜかを説明しよう。まずは以下の記事。
プリウスのトラブル、報道相次ぐ=公開実験後に-トヨタ苦慮
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 【ニューヨーク時事】トヨタ自動車ハイブリッド車プリウス」のドライバーが、スピード制御不能になったなどと訴える騒ぎや事故が米国内で相次いでいる。自動車の不具合か、運転ミスかなど、原因はいずれも不明だが、米メディアが大規模リコール(回収・無償修理)問題に絡めて盛んに報道しており、トヨタ側は苦慮している。
 8日にはカリフォルニア州サンディエゴ近郊で、2008年型プリウスを運転中の男性(61)が「ブレーキが利かない」と警察に緊急通報。駆け付けたパトカーが高速道路上で、ハンドブレーキを使うよう指示しながら並走して停止させるという騒ぎが発生。9日にもニューヨーク市郊外で、女性(56)が運転していた05年型プリウスが石垣に衝突。米メディアによると、負傷した女性は警察に対し、車が勝手に加速したと話している。
 トヨタは8日に、電子制御装置の欠陥説に反論する実験を公開したばかり。その後も立て続けに疑惑を呼ぶ騒ぎや事故が発生したことで、関係者からはため息も漏れている。プリウスに関しては、アクセルペダルがフロアマットに引っ掛かって急加速事故を起こす恐れがあるとして、トヨタは昨年11月に04~09年型を対象にリコールしている。 
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 普通の市販車のブレーキパッドは過酷な状況には耐えられない。私のかつての愛車RX-7でさえ純正のブレーキパッドでは攻め込むと加熱して容易にフェードしてブレーキの効きが悪くなる、そしてそのままブレーキを酷使しつづけるとブレーキパッドが異常な摩耗を始める。これはスポーツ用のブレーキパッド、サーキット用のブレーキパッドでも同じことが言える。200km/hを超えるような速度から一気に80km/hまで減速するような操作を何度も続けるサーキットでは容易にブレーキパッドがダメになっていく。例えるなら、強い力を加えて消しゴムを使った時のような状態と同様にブレーキパッドがすり減っていく。

 3月8日のカリフォルニア州で起きたプリウスの”ブレーキが利かない”状態。プリウスは90mphの速度で走り続けブレーキを踏んでも効かなかったという。それが事実ならばブレーキパッドはボロボロになり、ブレーキフルードは沸騰しブレーキ周りからは煙が出ていたはずだ。いずれにせよその車両のブレーキを見れば本当にブレーキを踏んでいたのかははっきりとわかるはずだ。さらに、ブレーキを踏んでも止まらなかった車がハンドブレーキを用いそしてパトカーに押し戻されるような形でなぜとまったのだ? 本当に車に問題があってエンジンが全開のままになってしまっていたのならば、こんなことでおとなしく止まるはずがない。

 しかし、これがブレーキペダルとアクセルペダルの踏み間違えが原因だとしたら非常に納得がいく。


 事の本質は私の立場からはわからない。科学者として最も重要な”観察”ができないからだ。こうしてインターネットを通じて得られる情報しか判断する材料がない、その情報の範囲内でしかものが言えない。


 いずれにしても今後のトヨタの健闘を祈る。そして原因が究明され人々が正しい道に進むことができる日が来ることを。









 思い込みの強いアメリカ人達を説得するのは容易ではないんだよ。