平和な一日

 4月12日、ミネソタ晴れ

 もう朝も寒さを感じることなく、とても心地が良い。

 ただ、外気は非常に乾燥し湿度は40%程度しかない。なので春なのだけれど、アパートでは加湿器を使っている。使わないと朝起きたら口はカラカラ、唇ガサガサ、手も顔もカサカサである。

 今日はのんびりと出勤し、朝からデスクワークに励む。いつぶりだろう、こうして自分のデスクに座ってじっくりと仕事をするのは。

 これまでは私のオフィスは4階にあったのだが、オフィス全体のリノベーションのため1階に仮のオフィスを作りそこで仕事をしている。それほど広くない部屋に男5人が座って仕事をしているのはちょっとやな感じだが仕方がない。
 さらにこの新しいオフィスは無線LANのシグナルが非常に弱く、めったにつながらない・・・・・・・。壁には4個、新しく高速な有線LANの接続口が先日敷設されたが、なぜかそのうち1個しか動作せず、同僚がいろいろなところに電話をかけ、たらいまわしにされさんざん電話で話したがらちが明かず "More work" と不機嫌そうにつぶやき事務方の馬鹿野郎のオフィスへと向かっていった。
 それと先日、大学のオフィスに白昼堂々と強盗が入り、女性が被害にあった。そんなわけで1階にオフィスがあるってのはちょっと怖い。なので皆、これまで以上に注意を払い常に入り口のドアは施錠した状態にしてある。

 今日は朝からずーっとパソコンをにらみ続けていた。これまで行った膨大な実験から得たデータをエクセルに打ち込み、そして膨大な写真を画像処理ソフトを使用して定量化していった。私の仕事の工程の一つに、とある細胞集塊の直径と数を数える工程がある。通常これは顕微鏡をのぞきこみ手作業で測っていくのだが、現在、画像処理ソフトを使って測定することを実験的に行っている。手作業で数えるとせいぜい全部で200個程度なのだが、画像処理ソフトで計測すると時には1500個を超えることがある。そう、人には計測するのが不可能なほど小さな細胞集塊も同定できてしまうのだった。これまでは直径が50μmに満たないものは無視していたのだが画像処理ソフトではこの小さなものも精確に直径が測定できる。この小さなものがどれだけの意味を持つのかもひそかに検討しているところである。

 本当は何人かで分担してしたいこの作業ではあるが、だれも名乗りを上げることなく私一人でやっていた。そんな私を見て興味を持った若いスタッフの一人Rが写真を撮るところを手伝ってくれるようになった。実は2か月ほど前に大人のおもちゃがうちのラボに導入されたのだが、どんなものかというと motorized stage とデジタルカメラが装着されたストルツの顕微鏡。このmotorized stageにはサーボモーターが2軸に装着されていてパソコンで制御して自動的に広範囲の写真がとれちゃうのだ。ただ、操作が簡単ではなく誰もがこれまで私がしているのを見て見ぬふりをしていた。
 しかし、2週間ほど前、ついに好奇心に駆られ若いスタッフのRが”私も手伝わせてください”と名乗り出た。そして現在ではこの二人で毎日何枚も写真を撮っている。ちなみに1枚の写真を撮るのに5分もかかる。なぜかというと1枚の大きな写真を作るのに80枚の小さな写真を撮る必要があるからだ。
 この仕事は私が勝手に始めたことだったが、先日ちょっと嬉しいことがあった。ラボの中で大ボスと中ボスと私たちとで実験のことで激論になっていた。いつもの事だが、中ボスは実際のデータを示すことなく、ちょっとここがあーだったとか、ちょっとこの時は細胞が弱かったとかおよそPIとは思えないような内容をしゃべり続ける。何ら具体的なデータを見せることなく、持論を大きな声で力説する姿はよくわかっていない人には勇ましく映るだろうが、私はあきれ果てているし、大ボスも少々苛立っていた。そんな時、実際に私が撮影していた写真を見せて私が説明したところ、大ボスが大絶賛。"I love this picture!! Great! It is much more valuable!!" と喜んでくれた。なによりもmuch moreなのかは言わずもがな。私が示した写真はいかに中ボスの説明が主観的で価値を持たぬものかをスタッフ全員に知らしめる結果となったので少々心苦しくもあったが。


 てなわけで気がついたら午後2時になっていた。

 モニターをにらみ続けて目の疲労は極致に達していた。なので散歩に出かけた。

 いつもの階段を下りる。
イメージ 1


 ミネソタ大学のボートハウス。いつみてもきれいだ。
イメージ 2


 木々にも新しい葉が芽吹き春を強く感じさせる。
イメージ 3


 向かった先はミシシッピー川
イメージ 4


 冬の間は凍結していたが、今はもう氷はどこにもない。
イメージ 5


 とても気持ちの良い風が吹く河原で遠方注視を行う。これで目の筋肉の運動を行い、疲労を解消する。
イメージ 6


 タンデライオンが咲いていた。
イメージ 7



 さて今日は私にとっては非常に落ち着いた平和な一日だったが、我が家の次女と三女にとってはそうではなかった。

 そう、予防注射の日だったのだ。


 さて、帰宅してみると。

 床でぐったりとする三女。
イメージ 8

 両側大腿に予防注射を受け泣きまくってぐったりとげんこつしゃぶりをしていた。最近、どんどん顔も腕も足も太くなっている。これは長女も次女も同じだった。彼女たちの過去の写真を見比べてみると私には誰が誰だか区別できない。

 ちなみに我が家の床は非常にきれいである。徹底的にカーペットクリーナーで掃除し、どこでも寝転んでもOKな状態に保っている。

 それと予防注射の後に貼る絆創膏は出血が止まったら除去してしまって全く問題ない。針孔は抜針して数分後には塞がり、外部から水等の異物は侵入しない。なので絆創膏は針孔から出てくる少量の血で服が汚れるのを防ぐ程度の意味しか持たない。


 そして次女も床の上で寝ていた・・・・・・・。

 二人とも予防注射にやられてしまったらしい。

 一人、晩御飯のお手伝いをする長女。
イメージ 9

 今日、エレメンタリースクールはミネソタツインズを応援する日で、先日購入した7番マウアーのシャツを着て登校したのだった。てっきりクラスの全員がツインズのシャツを着てきていたのかと思ったが、長女に聞いたら5人だけだったらしい・・・・・。

 そんな長女が作っていたのはとんかつ + ?????
イメージ 10

 右側に写っている正体不明の食べ物。残った衣で作った、パン粉フライだった。

 長女はこれをとても気に入って明日のお弁当に入れて欲しいと妻に頼んでいた。それを聞いた私は ”貧乏くさいから頼むからやめてくれ” と頼んだのだった。

 実は昨夜面白いことがあった。午前3時過ぎ長女がベッドから突然起き上がり、英語でぶつぶつ何か喋っている。

 ”What's the matter?” と聞くと ”I don't know! I don't know!” とうわごとのように英語でしゃべり続ける。

 ”うるさいからもう寝ろよ!” と言うとばたっとベッドに倒れこむように再び寝入った。

 いったい、どんな夢を見ていたんだ、長女よ。