ボロボロの臓器

 5月21日、ミネソタ曇り

 今日は曇りですずしい。

 今日は臨床のお仕事だったのでセントポールに出勤。

 準備を済ませ臓器の到着を待つ。いつもより1時間遅れで臓器が届いた。

 ・・・・・・・・・・、ボロボロやないか・・・・・・・・。

 ボロボロの臓器=散々な結果=患者さん悲しむ、なのでせっかくの金曜日がハッピーフライデーじゃなくなるやないかーい。

 やな日だ。やな日になりそうだ・・・・・・・・。

 実は2週間ほど前にも、今日と同じようにボロボロの臓器が届いたことがあった。その時は中ボスがいたので中ボスの希望通りの処置をして散々な結果になり、やな一日になったことを覚えている。

 これまでも時々、同じようなことがあっていつも散々な結果でスタッフ一同、しかたないよと肩を落としていたのだったが、2週間前の時にある素敵なアイデアが私の頭に浮かんでいたのだった。

 今日はみみざわりな中ボスもいない。そして、いつも通りのことをすれば最低の結果になることは皆わかっている。なのでこのボロボロの臓器を見た瞬間、みんなあきらめていた。

 しかし、私はこの臓器を見た瞬間。キターっと思った。私の素敵なアイデアを実行するときがこんなに早く来てくれるなんて! なんて素敵なハッピーフライデー!

 さて、勝手にいつもしていないことをするわけにはいかないので手短に職場の全員に私のアイデアを伝え、満場一致で賛成を得られたことを確認した後、同僚に ”スカルペル!” と言ってメス(=スカルペル)を持ってきてもらい、おもむろにざくっとメスで臓器を切り始めた。

 そして頭に思い描いていた通りのことをそのまま目の前で再現した。実は今日みたいな日が来ることを期待し、すでに何度かイメージトレーニングをしていた。そう、細かい手順まですでに私の中には出来上がっていた。

 うまくいった。

 いやー、日本人外科医ってすごいねー と自己満足。一人でこんなこと普通できんじゃろう!どうよアメリカ人諸君。なんてね。

 Good observation, Good surgeon. てところだろう。

 その結果、いつも以上の良好な結果が得られ(いつもの2倍の成績。もしこの臓器を普段の方法でやっていた場合に予想される結果の10倍の結果)、みんな満足。

 そして同僚が満面の笑みを浮かべこういった。

 Nice job today! この患者を救ったのはあなただ!

 これぞ、ハッピーフライデー。


 明日は土曜日

 みなさん、 Have a nice weekend!!