誠に遺憾だと?

 6月1日

 アメリカのニュースを読んでから再び日本のニュース記事を読んでいたら。

 こんなニュース記事が出ていた。

夕張市立診療所、救急搬送断る 市長「誠に遺憾」
 北海道夕張市は1日、財政破綻後に市立病院から公設民営化した市立診療所が5月、心肺停止だった男性の救急搬送受け入れを断っていたことを明らかにした。男性は別の診療所に運ばれ、死亡が確認された。
 藤倉肇市長は同日、記者会見で「誠に遺憾」と話した。市立診療所を運営する医療法人「夕張希望の杜」から事情を聴き対策を協議する方針。
 夕張市などによると、5月19日午前8時ごろ、同市旭町で50代の男性が自殺を図り、心肺停止となったと119番があった。救急隊は診療所に受け入れを要請したが断られた。希望の杜は市に対し「自殺と聞いて回復が望めないケースと判断した。医師1人で外来などへの対応があった」と説明しているという。
 診療所は昨年9月にも同様に断ったことがあり、その後、心肺停止患者は市内で最も近い医療機関が受け入れることで合意していた。希望の杜は3月に常勤医3人が退職し現在は常勤医1人。5月19日はほかに非常勤医1人が来る予定だった。
 藤倉市長は「夕張市が立ち上がろうとしている時に、市民の不安が募れば再生に水を差す」、希望の杜は「話せることはない」としている。


 え!!なぜにこの市長はこんなことが言えるのか??

 以前より村上先生のことはテレビの特集や記事などで知っていた。地域医療を立て直すため熱心に医学生を勧誘し、地域医療のやりがいを訴え、大借金してこの大赤字病院の運営を引き継いだ人だ。
 この市長の発言・・・・・・、村上先生からしてみたら、後ろから援護射撃をしてくれるかと思っていたら、援護射撃ではなく自分の心臓めがけて弾を打たれたような気分ではないかな。いや、もしかしたらそうではないかもしれない。いつかこういう日が来るのではないかと思っていたのかもしれない。
 市政と村上先生との関係がどうであったかの詳細を私は知らないので何とも言えない。

 ただ、市長には ”当時の状況では、村上先生の判断に問題はないと思います。村上先生の判断は批判されるべきものではなく、国の医療政策がそもそもの問題なんです。” ぐらいのことを言ってほしかったな。

 そう、本当の問題は、 ”救急医療が不採算になる” ことだ。

 お国が定めた診療報酬では ”救急医療が不採算になる” からだ。

 そしてその不採算部門の救急医療を助けることをしなかった、夕張市。なのに、”夕張市が立ち上がろうとしている時に、市民の不安が募れば再生に水を差す”って・・・・・・。誰が水を差しているんだ!あんただろ!!

 ただ、夕張市側としても不採算部門に税金を投入する体力なんかないだろうしな・・・・・。

 そう、問題は今の日本の医療費制度にあるんだよ。

 今の日本の救急医療現場は ”過度のストレス”、”高い訴訟リスク”、”不採算”・・・・・・。

 いくらやる気があろうと、熱意があろうと、高い志があろうと、こんな現状では一般市民が期待するような救急医療を全国各地に設置するのは無理なんだよ。

 こんな状況で日本の医療がまだ完全崩壊に至っていないのは日本人医療関係者たちの自己犠牲にあると断言しよう。

 アメリカ人だったら ”え、こんなに働いているのに、こんなに給料少ないの? なのに文句言われるの? 助けてもくれないのに? やってられませんね” ってすぐに辞めちゃうと思うよ。

 そもそも、この記事に書かれている出来事が全国紙に載ってしまうってこと、それも村上先生に批判的な内容で。相当なストレスだぞ、夕張医療センターの職員の方々にとって。

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