Root Canal Therapy

 6月4日、ミネソタ曇りのち晴れ

 なんだかすがすがしいような、不安を感じるような朝だった。

 朝起きて、私の車”赤い奴”にナビを設置して出発。

 向かった先は歯医者。歯医者とはいってもアメリカは専門が非常に細かく分かれており、Endodontist(歯内治療医)と言われる歯医者のいるクリニックに向かった。

 EndodontistとはRoot Canal Therapyのみを行う歯医者の事らしい。(今日行った歯科に置いてあったパンフレットに書いてあった)

 Root Canal Therapyとは日本語に訳せば、根管治療。昨日の記事にも書いたが、ご存じない方は以下のリンクを参照。
根管治療/根幹治療(歯の神経・根の治療)について詳しく説明

 予約時間よりも30分早くクリニックに到着した。

 アメリカの場合、普通の診療所も歯科診療所も初めて行く場合には予約時間の最低15分前に到着するようにしたほうが良い。というのが、問診表を渡されて書く時間が必要だからだ。まあ簡単な問診票なので医学用語さえ理解できれば2,3分で書き終わる。

 今日も大学からの紹介という事で”学生さん?”と聞かれた。ちょっとむかついたので研究者でこんな研究をしているんだよと説明すると、まったく専門用語が受け付けのおばちゃんは理解できなかったようで困惑していた。

 予約時間までまだ時間があったので待合室で待ったのだが、患者は私だけだった・・・・・・・。どんだけだよアメリカ。

 さて歯科助手さんが待合室に迎えに来てくれた。

 そして再度、欠損した歯のレントゲン写真を撮り現像が終わってすぐに歯科医のおばちゃんが現れた。

 大学の歯科診療所は完全デジタルのX-Ray systemだったが、今日行ったところは古典的なフィルムを使用したX-Rayだった。ただ、日本だったら歯の写真を撮るのにレントゲン室なるところで撮影するのだが(私の20年以上前の記憶によるとだ)、アメリカは診療を受ける個室に、小型のレントゲンの装置が置いてあり、歯科助手さんがあっさりと撮影してくれる。

 そう、今文章を書いていて気がついたが、アメリカでは診療は全て個室行われ、外からの音はほとんどしない。エアコンの音がわずかにするだけで非常に静かで落ち着いていて快適である。

 私の歯のレントゲン写真を見ながら歯科医から問診を受けた。

 問診内容としては、

 冷たいものや熱いものを食べたときに痛みを感じるか? > いいえ
 物をかむと痛むか > 強くかむと痛む

 といったような日本でも聞かれるような内容。

 その後、診察。歯の欠損部位の観察、周辺の歯の固定性の確認。歯に非常に冷たく冷却した道具を当てて冷たさを感じるかどうか。

 一通り、診察が終わり、やはりRoot Canal Therapyをしたほうが良いという事になった。

 その最大の理由は 歯の欠損が大きいから だそうな。

 さて、麻酔のお時間です・・・・・・・・。まず、ガムみたいな味のする表面麻酔薬を麻酔のお注射をする部位に塗る。3分ほど待つ。さて、来ましたよ。お注射(今日使用された麻酔薬はProcaine、商品名Novocaine)が・・・・・・。先ほど表面麻酔したところにすっと針を刺す。針を刺す瞬間は先ほどの麻酔の影響で痛みは感じなかったが、その後、針を進める時と麻酔薬を注入するときは痛かった。痛かったとはいっても”まあこんぐらいの痛みはするわなっ”て程度。

 ここで気がついたことがある。

 まず、穿刺部位。治療をする奥歯よりもはるかに奥に穿刺している。なんでかわかるかい? なんでかわかった方、あなたは素人ではないですね。そう、伝達麻酔をしているんですね。日本でも歯科で伝達麻酔してるのかな。私の子供のころの記憶によると、治療を受ける歯の付け根に表面麻酔もなくいきなり注射して、治療が済んで歯科診療所を出た後も、歯茎がバンバンに晴れていたのを覚えている。いわゆる局所麻酔ってやつですな。正確に言うと局所浸潤麻酔。
 ちなみに伝達麻酔は外科医にとっても非常に重要な技術、知識である。

 それと、麻酔薬の注入速度。これは極めて重要。麻酔薬の注射を打たれたときにずどーんっと衝撃を受けるほどの痛みを感じた記憶のある方、結構いるんじゃないかな。それはね、麻酔薬を勢いよく注入されたからなんだよ。とある速度以下で麻酔薬を打つと有意に痛みが少ないんだよ。その事がわかっているんですね、アメリカの歯科医は。私も臨床医をしていたころ、このことに非常に気を使っていた。麻酔が痛かったなんて言われると悲しいからね。

 さて麻酔が効くまで5分待ち。

 さて治療開始。口を開けて装着したのは!!!ラバーダム!!!!
 これですな。(上記サイトより拝借)
イメージ 1

 初めて見たので名前がわからなかったがそれが非常に意味のあることはすぐに分かった。

 一つ目は治療中に洗浄液等がノドにたれこむのを防いでくれる。子供の頃、虫歯の治療を受けるのが非常に嫌いだった。その一番の理由が治療中にのどに洗浄液や唾液がたまってきて、それを飲み込むことも吐き出すこともできず、ただただ治療が終わるのを待つしかなかったからだ。当然、当時も歯科助手さんが口の中を吸引してくれるのだが、のどの奥までは吸引できていなかったんだよ。
 二つ目、こっちのほうがもっと大事。感染予防になるんだわ。人間の口の中は細菌だらけ!、口腔内の細菌が治療でぽっかり穴の開いた歯に付着してそのまま詰め物をすると・・・・・・・、感染成立だわな・・・・。
 三つ目、視野の確保。ゴムで口唇が圧排されるので、ある程度術野を保つのに役に立つ。

 約1時間30分でRoot Canal Therapy終了。麻酔も十分に効いていて痛みは感じず、喉に液体が垂れこんでむせそうになることもなく、快適だった。正直に言うと、半分寝てた・・・・・・。ちなみに私は散髪屋でも時々寝てしまうので美容師さんが困っていた。

 ただ、バイトブロックをかまされて大きく口を開けていたので治療が終わった時には顎が若干外れていた。それと、伝達麻酔恐るべし。左下顎神経がまるごとマヒしていて、下顎左側の歯全て感覚なし。舌左半分の感覚なし。下口唇左半分が十分に動かせない、感覚がない。顎も左半分は温痛覚なし・・・・。

 治療は無事終了し、受付に戻る。そしてお支払。アメリカでは医療はあとで請求が来るが、歯科医療はその場で払うようだ。

 総額:1135ドル。自己負担227ドル。

 たっかいのー!!!、いったい日本の何倍(7倍らしい)なんだよこれ???。しかも、これで治療が終わったわけではないんだよ。これからクラウンを被せるのにも同額ぐらいかかるんだわ。

 ただ、次にクラウンを被せに行けば治療は終了するので早いっていえば早い。日本のように虫歯になったら訳が分からんほど何度も通院させる歯科があるが、それと比べれば通院回数は最小限だろう。ちなみになんで日本の歯科はありえんほど何度も通院するかは、歯医者の友人複数の証言から裏事情を知っている。ちなみに私の友人は最小限しか通院させないと胸を張っていた。が、それでは経営が成り立たなくなる危険があるのが日本の歯科医療制度なんだよな。

 ちなみに先ほど引用したサイトから
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なぜ(日本では)ラバーダムをしない歯科医院が多いのか?

最大の理由は、「根管治療の保険点数が低すぎるから」だと思われます。
日本の根管治療の保険点数はアメリカの約7分の1と非常に低く、普通に治療を行えばほぼ間違いなく赤字になります。
そのため、本来は大学でも使用するべきだと教わっているはずのラバーダムを省略する医院が大多数を占め、また、周りの歯科医院もしていないから、ラバーをしても成功率に差は無いと思っているから、ラバーを嫌がる患者さんが多いからなどの理由で、ラバーダムを使用していない歯科医院が多いのではないかと思います。。
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 アメリカに生息する、Root Canal Therapy専門の歯医者ってええよなーっと思ってしまうのは私だけだろうか? これだけで生きていけるなんてなー。日本の歯科医なんて何でも自分一人でやらないといけないもんな。日本は医療費安すぎるし。
 私も鼡径ヘルニア専門医です、これで豪邸立ちました、なんて生活してみたいよな。つまらないだろうけど。

 今日診療してくれたおばちゃん歯科医と若い歯科助手さん、とても感じの良い二人で世間話をしてしまった。腕も良かったんじゃないかな。私は歯科医ではないが、全く迷いなく手を動かし、助手さんとの息も貫壁にあっているのを見ると、決して腕は悪くないのではないかと感じる。二人は、ええ感じのパートナーじゃのうと感心しながら私は寝ていた・・・・・。治療が終わってからもいろいろ技術的な質問を歯科助手さんにしたけれど嫌な顔一つせずに、むしろ説明してあげるのが楽しいわ、って感じの笑顔でいろいろ教えてくれた。欠損部に入れる充填剤および充填する機械を私にも試させてくれた。

 さて、歯科診療所を後にし寿司を食べに行ったが予想外に麻酔が効いていてまともに食べられそうになかったので To Go にした。

 先ほど、晩御飯としておいしくいただきました。



 これだけの文章を一気に書くと、誤変換(Microsoft IME 2010)がひどい・・・・・、やっぱATOKにしようかな。