Boynton

 6月25日、ミネソタ晴れ、曇り、サンダーストーム

 昨日夕方、長女が指をアパートのドアにはさんだ。腫れてきた、可動制限も軽くある、痛みも強い。さて、しばらく様子を見ましょう。

 すると、長女が自分で指を氷水で冷やし始め、さらにその指が動かないようにテーピングし始めた・・・・・・・。

 なんと・・・・・、おまえさん・・・・・、プロかい?

 患部を冷却するのは一般的にも医療の世界でも当然のことだが・・・・・・・。

 打撲や捻挫の時にテーピングして患部を圧迫・固定するってのはスポーツの世界でも医療の世界でもする。

 そして今朝になり、指を診る。うーん、微妙・・・・・。でも圧痛は強く、可動制限も残る。

 てなわけで仕事を午前中休んで大学にある診療所、Boynton Health Serviceに行ってきた。

 看護師も医者ものんびりと仕事をしていてとても親切。飛び込みで行ったが待ち時間はほとんどなし。

 若い看護師が予診をとる。

 Urgent careに回しますと言われる。

 次にUrgent careの年輩看護師が追加で予診をとる。

 ”とってもsillyな(ばかばかしい)質問なんだけどね、違法な薬を使用していますか?”、”アルコール飲料は飲みますか?”

 などと、一通りの質問を長女にしていく。長女もちょっと驚きながら真面目に答えていく。

 アメリカ生活も14か月を超え、長女もたいていの質問は普通に答えられるようになっている。たまに質問内容がわからないときには私を見るので日本語にして説明してあげるとちゃんと答える。よしよし。

 次に、年配の医師の診察。そしてX-Ray(レントゲン写真)の撮影。

 レントゲンはデジタルであった。

 診察室に戻る。

 手のレントゲンを液晶モニターで年配医師と一緒に見る。

 骨折は見つからないねとその医師の意見に同意する。ここで何か質問は無いかと聞かれたので ”ない” と答えると非常に不思議そうな顔をされたので、”実のところ、私は外科医なんです” というと、”なるほど!そうだったんですね!” と満面の笑み。ついでにお互い自己紹介をし直して少々世間話をした。最後に”研究がうまくいきますように”と言ってくれた。

 さて、骨折は無かった。ただし ”しょぼい液晶モニターで見る限り” はだ。

 今は日本でも単純レントゲン写真、CT、MRIなど、以前なら写真に現像していたものもデジタルデータとしてオンラインサーバーに蓄積され、院内のパソコンからいつでも見ることができるようになっている。私がそのデジタルシステムを使うようになったのは約7年前に勤めていた病院が電子カルテシステムを導入し、レントゲンもすべてデジタル化された時だった。

 それまでレントゲンフィルムをシャーカステンと呼ばれる光る壁にかけてフィルムを見つめて読影していたのが、その時から液晶モニターを使用しての読影に切り替わった。正直言ってよくなかった。これまで見えていたものが見えないのだよ液晶モニターでは。私の外来診察室の液晶モニターはそれなりに高性能だったが、放射線科医が読影に使用していたのは専用の高性能液晶モニターピクセル密度が高く、コントラスト比も非常に高いものだった。なので微妙な症例の場合、必ず放射線科医に電話して”先生どうです?何か見えます?”って必ず聞いていた。

 私はデジタル大好きパソコン大好き人間だと思っていたが意外にアナログのほうが好きかもしれないとその時思ったのだった。実のところ車でもそうだ。今の車は電子制御の塊でどこか面白くない。コーナリングにしても4輪に独立してトルク配分して強制的に車をまげて行くようなシステムが搭載されている車が増えてきたが、正直言って面白くない。安全かもしれないし、それまでありえなかったような速度で曲がれるかもしれない、でも面白くはない。これまで何台か車を乗り継いできたが、一番好きなのはハチロクかもしれない。次に好きなのがRX-7か。3番目がパルサーGTi-R(RNN14)かな。ブレーキがしょぼくてとまらない、フロントヘビーで曲がらないって典型的な昔の四駆だったけれどそれを乗りこなすのが楽しかったな。ブーコンを自分でつけたなんちゃってブーストアップ仕様だったけど加速だけは結構良かった。今でももう一回乗りたいなーなんて不埒な感情が時々こみあげてくる車だ。

 さて話がそれたが、今日診察してくれた年配医師もこう言っていた。”放射線科の読影で何か異常が見つかったらすぐに電話連絡します” と。おそらく放射線科医はまともなモニターで読影するのだろう。

 結果としてしょぼい液晶モニターでは特に異常は見えなかったし、今日症状が悪化することもなかったのでまあ安心してもいいだろう。

 3姉妹の父親となった今、はるか昔独身だったころと比べると心配事ははるかに多い。子供が怪我をしたり病気になって入院したりと。それでも、子供たちそして妻の笑顔に囲まれたこの生活はとても素敵な人生だと心から思う今日この頃です。

 今日の三女です。
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 現在約5か月、病気もせず怪我もせずすくすくと成長しています。君のその笑顔にありがとう。

 そうそれと、今日、Boyntonで診察を終えて駐車場に向かって長女と歩いているときに、長女がこう言った。

 ”おとうさん、今日は病院に連れて行ってくれてありがとう” って。

 その時は嬉しかったが、よく考えてみると複雑な気分になってしまった。

 ”おとうさん、今日は診てくれてありがとう” って言われる状況のほうが私にはふさわしく、本来あるべき外科医としての父親の姿でははないかと。