ギリシャからの訪問者

 7月12日、ミネソタ晴れ

 今日はなんだか涼しい。日差しは強いが気温は低い。

 朝起きて、なんだか体が重い、気分も重い。なぜだか良くわからなかったが、とりあえず仕事にいく。

 今日は臨床の仕事で、準備をして臓器の到着を待っていた。

 通常は1時間で、臓器が届く。そしてそれまでの間、スタッフたちは思い思いのことをして過ごす。仕事をしている人もいれば雑談に花を咲かせている人もいる。私はなんだか話をする気にならなかったのでNew York Timesを端から端まで読んでいた。

 その記事の中でも特に真剣になって読んでいたのがランス・アームストロングの記事。

 こちらです。


 昨日、3度のクラッシュに巻き込まれてタイムを大きく落としたランス。

 もう、総合優勝は絶望的な状態。そして彼も、”私にとってのツールはもう終わった” と言っている・・・・・・・。

 もちろん、彼が語ったのはそれだけではない。ただ、意訳するのは恐れ多いので、原文のまま引用しておく。

“The Tour is finished for me, but I could stay in the race, win stages and help the team and really try to appreciate my time here and appreciate that I’m not going back here,” Armstrong, who is 38, said. “No tears for me. I’ve a lot of good years here, where it’s been pretty different. I’m not going to dwell on today.”

 この記事を読みながら、私の眼にはうっすらと涙が浮かんでいた。


 その後、仕事を再開し、同僚たちと話をしていた。

 同僚 ”ランスは昨日、3回もクラッシュしたみたいですね”
 私 ”そうなんだよ。13分26秒遅れで、39位だよ・・・・・”
 同僚 ”ランスはこのツールで最後なのですか?”
 私 ”そう、彼自身がそういっているからね・・・・・・・”

 ここで気がついた、なぜ今日は気が重たかったか。

 ランスが総合優勝争いをして走り続ける姿をもう二度とみられないかもしれないからだった。去年もそうだった、途中でアシスト宣言をしてしまった・・・・・・・・・。

 とても残念だ。


 そして仕事を終え、今日見学に来てくれていた医師と話をしていた。

 彼はギリシャアテネ大学から来ていて、ずっと昔にマイアミで仕事をしたことがあった。そのマイアミには私の知り合いの日本人の外科医がいて、その人の事も知っていたので話が盛り上がった。

 ただ、彼の英語は非常に聞き取りにくい。いや、聞き取りにくいだけではない。明らかに発音が違う。たとえば so は私たちは ソ と発音するが、彼は ジオ もしくは ゾ と発音していた。これはギリシャなまりなんだろうか? それに気がつくまでは、全く彼の言っていることがわからないことがあった。

 ちなみにアテネ大学 University of Athensのホームページがこちら。


 日本語ではアテネなんだけど、英語だとアスィンズ。そう、地名ってかなり日本語と英語で発音が違う。たとえば今やっている映画、プリンスオブペルシャ。これが英語になるとプリンスオブパージャン。同僚と映画の話になって、パージャンって言われたときは一瞬だけ、なんやそれ?と思った。

 そして私には全く読めないギリシャ語。なんだが古代遺跡に刻まれている解読されていない古代文字のように感じる。

 それにしても世界は広い、そして狭い。いろんなところで私と同じ仕事をしている人たちがいる。そして幸いなことにそういった人たちと出会い、話をする機会がある。

 ちょっと、ヨーロッパにも行ってみるか? なんて思った日だった。

 え?何をしにヨーロッパかって? もちろん遊びですよ。観光、観光。