シートベルトは必須です

 8月11日、ミネソタ晴れ

 あついのう・・・・。今日、電気代の請求書が来たけれど、やはり去年の2倍の額だった。昨年の当月の平均気温が華氏71度、今年が77度とあった。あついのう。

 さて、今職場には大学生の女の子二人と男の子一人がバイトに来てくれている。やっぱり若い子たちってのは物覚えもよく、ミスも少ない。

 今朝、いつも通りミネアポリスで機材を車に積み込み、私の定位置の2列目に座ろうとしたら、バイトの女の子が座っていた。

 まあ、職場見学って感じでセントポールまで移動し一緒に働く。そして、帰路につくため車に乗り込むのだが、セントポールで一人合流してミネアポリスに帰るので、座る席が4人分しかなく、その子が、”いいですよ、私ここに座ります” と言って、2列目(キャプテンシート)の間の床にちょこんと座ろうとする。

 アメリカにもこんな女の子がいるんだなー、たいてい男勝りの恐い女性が多いってのになんてしおらしい、と思ったが、シートベルトもせずに車に乗せるわけにはいかないので、3列目を床から取り出して、そこに座らせた。

 その子曰く、”小さなときからここに座るのが当たり前だったので、あまり気にしてませんよ”

 なにーーー!!!、こらーーー!!!、どんな両親や!!!!!

 どうも、兄弟が多くて座る席がなかったらしい。

 こんなアメリカ人らしからぬ気量の良さはこうした家庭環境によって育まれたのかな、なんて思ったけれどそれにしてもシートベルトなしで乗るとは。

 ちなみに我が家ではシートベルトをしない奴は車に乗せません。例え赤子であろうと、育ち盛りの子供であろうと、たとえ泣きさけぼうと。

 そんな感じなので、今では長女、次女は自発的にシートベルトをします。三女は当然、チャイルドシートで5点式のシートベルト。

 これまでシートベルトに関してはいろんな症例を診ました。

 シートベルトをしていなかった例:
  フロントガラスを突き破り車外放出されて全身打撲、意識不明の重体。
  シートベルトをしていなかった子供が、事故にあい、車内で頭部を強打し家族の中で唯一、頭蓋内出血で緊急手術。
  ハンドルに腹部をぶつけて小腸多発損傷で緊急手術、4か所縫合してさらに小腸ストーマ作成。
  ハンドルに腹部にぶつけて肝臓破裂、緊急手術。

 これ以外にも沢山、診ました。シートベルトをしていたらこんなに重体にならなかったろうにという人や、死なずに済んだのにと言う人もたくさんいました。私は幸運にも術中死はこれまで一例も経験していませんが、他の同僚外科医の中には、交通事故腹部多発外傷で腹部の血管が何本もちぎれていて緊急手術をしなければ絶対に死亡するような患者さんの手術をして、溢れ出す血で血管やその他の臓器がほとんど見えず、全力で手術をしたもののその甲斐なく亡くなった経験をした人がいました。その亡くなった方はシートベルトをしていませんでした。

 ただ、シートベルトも万能ではなく、シートベルトをしていたけれど、シートベルトで腹部を強く圧迫されて小腸が裂けて穴が開いた人もいました。これはシートベルトの位置が骨盤よりも高い位置だったのが原因だろうと思っています。シートベルトをしていて例えば激しい追突事故を起こすと、シートベルトで皮膚が圧迫されて紫色の皮下出血ができるのでシートベルトの位置がわかるのです。


 シートベルトを正しい位置で装着して正しい姿勢で車に乗りましょう。


 それと、サーキットを走るような場合は4点式以上のシートベルトをしましょう。以前、岡山県にあるサーキットを走っていた若い女性がオーバースピードでコーナーに突っ込み、どアンダーでまっすぐ壁に激突して胸部痛を訴えて受診してきましたが、胸骨が真っ二つに折れていました。彼女は普通の3点式シートベルトで走っていて、シートベルトで胸骨が圧迫されて折れたのでした。コースアウトして壁に激突しうるサーキットってあそこの事です。彼女は愛車もボロボロ、体もボロボロになってしまったのです。

 私は学生時代、4点式シートベルトをして車を運転していました。そして、バイクの免許を取りシートベルトも何もないのに、車以上の速度で走っていると、最初はとてつもなく怖かったけれどじきになれてしまいました。この慣れってのが恐ろしいし、味方にもなるのです。

 シートベルトをつけるのが当たり前の習慣がつけば、シートベルトをしているほうが心地よく感じられます。

 特に、小さなお子さんお持ちの方、絶対にシートベルトをさせましょう。たとえ泣きさけぼうが、暴れようが。それが親の愛です。

 だって、子供が嫌がるんです・・・・・、なんて理由は愚の骨頂ですよ。