実験計画法 Design of Experiments

 9月2日、ミネソタ、晴れ、曇り、サンダーストーム

 もう9月ですね。

 さて、今日はまじめな話を。

 あまり、休日の遊びのことばかり書いているとですね・・・・、両親が ”うちの息子はアメリカに遊びに行っているのか?” とマジで心配するので。


 実験計画法について。

 日本にいた時も臨床の仕事をしながら研究も行っていたわけだが、その時の実験はきわめてシンプルなものだった。

 例えば、ある細胞の培養にとある試薬を用いるとその細胞の機能が強化されるかどうか?とか。

 そう、変化させる因子は一つか二つで、対照群を合わせても2群から3群、多くても5群だったわけ。

 これだと、簡単なt-testとかANOVAで統計学的分析は統計学者ではない私でもできるわけだ。

 しかし、ミネソタに来てからの実験は全く違った。

 実験のたびに変化させる因子が3個とかで、考慮に入れるべき因子は私が現在監視しているものだけでも20前後になる。もちろん無視している因子はもっとある。

 そんな20個の因子がどのように結果に影響を及ぼすか・・・・、どうすりゃえんならぁ? と途方に暮れていた。

 今思う、素人だったなと。

 所詮は外科医であって、統計を駆使して実験を行えるような研究者ではなかったと。

 さて、ならばどうするか。

 直感や机上の空論で、研究室をかき回す印度人とは対照的に統計学を駆使してやろうじゃないかと。


 実のところ、医学生時代、統計学の授業を受講していた。しかし、正直言ってつまらなかった。なんだかリアルじゃなかったし、当時すでに消化器外科医になることは自分の中では決心していたので、”外科医は腕とハートでしょ。そんな統計なんかは公衆衛生の先生ぐらいしか必要ないでしょ” と思い込んでいた。この思い込みは大間違いである。外科医にも統計学の知識は非常に重要で必須といってもいいぐらいだ、と今なら思う。

 そう、いまさらながら統計学の勉強を始めた。

 実験計画法を遂行するために。

 実験計画法???? Design of Experimants???????

 ( 余談だが、このWikipedia。日本にいたころから結構使っていたが、アメリカに来てもいろんなことで読むことがある。しかし、この実験計画法の項目でもわかるように、日本語のページの記載は非常に貧相である。なので最近はもっぱら英語のWikipediaを読むようになった。)

 恥ずかしながら最近まで聞いたことが無かった。しかし、今年に入ってからは、簡単な統計は自分でやるようにしていたので、年配の同僚から ”Design Expert 8”を使ってみないかと言われたことがきっかけで興味を持つようになったんだ。

 Design Expertはミネアポリスに本社を持つStat-Ease社のDesign of Experiments用のソフトウェアである。

 ようわからんけど、何に使えるのか知らなかったけど・・・・、ただ単におもしろそうだったのでYesと答えておいた・・・・・。

 その結果、私のために追加でライセンスが購入され、そしてIT guyが私の職場のラップトップにDesign Expert 8をインストールしていった・・・・。

 そのお値段、3人分のネットワークライセンスで1,050ドル。


 何に使えるか簡単に説明すると。

 たとえばこのState-Easeのホームページにもあるのだが、おいしいポップコーンを作るにはどうしたらよいかを検討できる。

 ポップコーンのメーカー、余熱の有無、かき混ぜる程度、出来上がるポップコーンの体積、そしてポップコーンの味。

 この5個の因子を統計学的に解析しもっともおいしいポップコーンをつくる方法を見つけ出すのだ。

 結論を書いてしまうと、ポップコーンのメーカーは味に有意差をもたらさず、余熱は不要でかき混ぜつづけると最もおいしいポップコーンが統計学的な有意差を持って出来上がるのだった。


 こんな具合で、日常にありふれたことにも有用であるし、製造業や販売業、医療、研究などの分野でも大活躍してくれるわけ。

 ただし、ちゃんと使いこなせれば。

 この Design Expert 8 を使うこと自体は非常に簡単なのだけれど、まともな統計学的知識を持ったうえで使いこなしたいので時間を見つけては勉強中。

 この研究生活。仮説の構築や実験計画の立案、結果の分析、考察でなりたっている。

 その、実験計画の立案及び結果の分析および考察においてこの実験計画法が大いに役立つ。

 実は統計学的解析は、統計学者に任せてしまうのは勿体ないほど面白いことに最近気がついたのだった。

 さて、今週も早朝からの肉体労働が続いて身体的にはもう満足。

 明日は肉体労働がないので、じっくりとオフィスで統計の世界に浸ろうと思うのだった。