育児休暇などについて考える

 11月9日、ミネソタ晴れ

 うーん、まだ温かい。最高気温20℃、最低気温11℃。

 ちょっと調べてみたら、岡山より温かいことが分かった。


 さて、最近、育児休暇およびイクメンについての記事を読むことがあったのでそれに関して少々考えてみたい。

 厚生労働省によると、民間企業で働く男性の育休取得率はわずか1.72%。

 日本のデータなわけだけど、意外に多いんだなというのが正直な印象。1%未満でほとんど育児休暇をとっていないのかと思っていたから。

 例えば、日本の男性外科医で育児休暇を取った人は聞いたことがない。私も長女と次女のときは一切育児休暇をとらず、母親に家事をお願いしていた。

 ただ、お産には何れも立ち会えている。妻は私の勤務先の病院でお産をしたからなのだけれど。でも、お産の直前まで病院で働き、お産に立ち会った後もそのまま仕事に戻っていた。そう、ずーっと働いていた。

 産後退院してからも、育児や家事はすべて妻と母親まかせ・・・・・・・。いったいどのくらいの量のミルクを普段飲んでいるかなんて当然知らなかったし。深夜、日が替わってから帰宅していたので、子供は就寝中。子供の成長状況は妻から説明を受けて納得するような状態だった。当然、育児休暇をとるなんてことは全く考えなかった。


 一方、諸外国はどうなのか?

 厚労省によると、男性の育休取得率はスウェーデンが78%、ノルウェーが89%

 驚くような数値である。ほとんどの男性が育児休暇を取っているような状況。

 日本とは比べ物にならないほど高率だけれど、これは文化の違いと社会構造の違いが大きく影響していると思う。

 日本は男が働き、女性は家庭を守るもの。今でもそう考えている人が大多数だろう。昨今の不景気の影響で女性も思いどおりの職場がなく、家庭に入りたいという傾向が出てきているらしいし。

 一方、北欧やアメリカは、男性も女性も関係なく、平等に働いている。むしろ、私の周りでは女性のほうが強いような気がするが。

 たとえば、渡米して初めて会う同僚たちといろいろと話をしたわけだけれど、大抵、”奥さんはどんな仕事をしているの?” と聞かれる。ここで、”今は主婦だよ” と答えると非常に驚かれたことを思い出す。女性でも子供がいても働くのが当たり前、そんな雰囲気だ。

 実際のところ、アメリカ人女性は働いている人が多い。そして料理が全く出来ない女性が多い・・・・・・・。

 さて、そんなアメリカで三女が生まれ、3週間の育児休暇を取ったわけだけれど。

 育児休暇を取るにあたって特にこれといった障害は無かった。

 日本だったら、どうやって上司に育児休暇の話を切り出そうか?とか、左遷されるかも? とか評価に響くかも?なんていろんな不安と闘って育児休暇を取らねばならないだろう。

 アメリカの私の周辺は全く違った。むしろ、育児休暇を取って当然、取らなきゃ変人。そんな状態。


 日本はとにかく一人当たりの仕事量と責任が大きすぎる。

 外科医の世界で言えば、日本は主治医制。20人とか30人の入院患者を一人で受け持ち、その患者と苦楽をすべてともにするのである。24時間365日。重篤な患者を受け持てば、家に帰る事も無く、眠ることも無く働き続けるわけだ。

 そんな状況なので、誰か一人でも外科医が育児休暇をとってしまうと、残された外科医たちにすべての患者の治療を押し付けることになる。普段でさえ限界付近で働いているのに、さらに受け持ち患者が増えると・・・・・・・・。過労死も覚悟しなければならない。

 自分が育児休暇を取ったから同僚の外科医が過労死しました・・・・・、なんて笑えないジョークである。

 でも日本だとそんなことが起きうる。なので男が育児休暇なんてありえないわけだ。

 それと、このような労働環境なので、産後の女性医師の復帰が非常に困難。

 パートタイムで働き、時眼外の呼び出し全くなし、子供の調子が悪ければいつでも欠勤って雇用状態が産後の女性医師には理想的だが、そのように働かれると、常勤で働いている他の医師からすれば、非常にストレスになる。

 ほとんど変わらぬ給料で、一方は時間外勤務なし、一方は労働基準法違反の劣悪な環境で働く。

 不平等極まりない。

 そもそもの問題は、常勤の医師たちは労働基準法違反の状態で働いていることであって、産後の女性医師がパートタイムで働くことは何の問題もないはずなのにだ。

 さて、アメリカ。入院患者はシフト制で診ていく。勤務時間が過ぎたら次の医師に引き継いで帰宅し、しっかりと休養を取り、プライベートを充実させることが出来る。

 アメリカの医師はこんな状況なので、産後の女性医師がパートタイムで働きやすいわけ。


 それと先月、「愛社度」ランキングワースト50ってのが日本で公開されてましたが、輝かしき1位はUSEN

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 残念ながらワースト1となってしまったのが、有線放送最大手USEN。同社の女性社員らは、グローバルの調べに対し「給与も賞与も本当に少ない。報酬面での期待はできない」「どの部署も帰りは終電で、残業は月100時間を超えるが30時間で頭打ち」などを愛社精神を持てない理由にあげている。
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 こんな企業、存在価値があるのか? 給料は少なく、膨大な時間のサービス残業。当然、労働基準法違反です。

 JALみたいに社員を異常なまでに厚遇し破綻してしまうのも困ったものだが、USENみたいな会社は無いほうがいいのじゃないかとさえ思う。だって、社員が一生懸命働いているのに給料も少なくて不幸だと感じているわけだよ。業態として成り立ってないんじゃないだろうか。

 アメリカは不景気で失業率も非常に高いが、かといって仕事を持っている人たちが死に物狂いで働いているわけではない。日本人の私からすると、とても優雅な勤務状態に感じられる。


 なんだか話がそれてしまったが、要するに日本企業、日本の病院は労働基準法違反もしくは残業して当然の考えのもとで運営されているところが多い。こんな状況なので男が育児休暇を取るなんて・・・・・・、困難だよな。


 でも、ぜひ日本の男性諸君、育児休暇を取りましょう。

 生後間もないわが子の世話を奥さんと一緒にやりましょう。かけがえのない貴重な時間ですよ。

 是が非でも育児休暇を取るべきです。 そして、育児休暇を取ることが当然の社会にしていきましょう。

 今年、3週間、育児休暇を取ってみて私もそう思うようになりました。