今日は不運だったね・・・・・。

 11月17日、ミネソタ曇り、小雪

 帽子をかぶって耳を隠さないと耳が痛いかな、そんなミネソタ

 先日から不運なこと?が続いた。


 昨日、愛用しているメガネを不注意で壊してしまった。

 アイメトリクスというブランドのメガネで日本で外科医をしていた頃から愛用していたもの。

 仕方がないので今日の夕方、郵便局(USPS)にいき、日本へ送って修理依頼をしようと思っていた。


 そして、今日も早朝から実験。

 ミネアポリスで機材を車に積み込み、セントポールに到着。

 機材の入った大きなかばんを開けると、手術道具が入っていない・・・・・・・・。

 担当している同僚に聞くと・・・・・、”入れ忘れてしまいました・・・・・・”

 結局、同僚が取りに帰るのを待つことになった。

 これで約30分のロス。

 まあ、たいしたことないわなと、のんびりと同僚の帰りを待つ。

 そして、実験を開始し順調にことは進んでいく。

 今日は普段の2倍の結果が出て、同僚一同、大興奮。

 すべての事がうまくかみ合ってこの良好な結果が得られたわけで、私も嬉しかった。

 私たちのチームはこの仕事ではおそらく世界一だろうな、なんて考えていた。

 しかし・・・・・・、実験の最終工程で、特殊な遠心分離機を使用するのだが・・・・・・・。


 実は、昨日、この遠心分離の工程がうまくいかなかったのだ。

 この工程は、非常に簡単なんだけれど、些細な間違いで全て台無しになるので非常に重要。

 渡米してから今まで、私は一度も失敗したことがなく、同僚も完全に私のことを信頼してくれている。

 しかし、昨日、全くうまくいかなかったのだった。

 私はその機械の動作がやや不自然(回転数が微妙に変動している)に感じたので、同僚に早急に業者に連絡し点検してもらうように依頼していた。

 すると、今朝、業者が点検してくれて全く問題ないといわれたそうな。

 てことは私が気がつかぬうちにミスをしていたのだろうか? 疑心暗鬼というか、少々不安になる。


 そして今日。その昨日うまく行かなかった機械を使うのはやめ、もう一台の安定している機械を使うことにした。

 そして、同僚に頼み、私の作業を全て見ていてもらった。

 途中まで何の問題も起きない。

 そして、最後に押すボタンを押したら・・・・・・・・、遠心分離機の回転が突然止まってしまった・・・・・・・・。

 はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ、何でこんなことが起きるんだ!!!!!!!

 と、思わず同僚たちの見つめる中、絶叫してしまった。

 本来は回転を保っていなければいけないはずの機械が突然止まったのだ・・・・・・。

 ありえねぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!、なんてことはありえねぇぇぇ。と、内心思った。


 こうなれば、昨日うまく行かなかったが、点検では問題がないといわれた機械を使うしかない。

 仕切りなおしだ。そして、再び同僚にみてもらいながら作業を続けた。

 その結果、昨日と同じ最悪の結果となった・・・・・・・・。

 その再現性のすばらしいこと!!!!! まったく同じことが起きたのだった。

 でも、点検では問題ないといわれたのになぜここまで、再現性が保たれているのだ!!!!!


 急遽、実験を中止し、大ボスたちと会議を始めることとなった。

 そして、業者の人にすぐに来てもらって、動作確認を全員ですることになった。

 すると、異常がすぐに見つかった。

 まず、私の感じていたとおり回転数が変動していた。

 その変動率、なんと!! 最大で25%!!!!

 業者曰、15%までは許容範囲内らしい・・・・・・・。え、1.5%の間違いだろうと思ったが、15%らしい。

 いずれにしても25%はあきらかな異常値。

 それと、これは信じがたいのだが、回転数を800rpmに設定しているのに、実測値は1000rpmを中心に25%の変動を繰り返していた。

 いったいいつからこんなに狂っていたんだ・・・・・・。定期保守点検をしているはずなのに。ちなみに昨日同僚に聞いたのだが、定期保守点検代1500ドルなり・・・・・・・。


 そして機械の背面のパネルを業者のおにーちゃんがはずし、基板を確認する。その瞬間、おにーちゃんがこう言って笑った。

 ”これはオールドスタイルですねー”

 そう、我々が使っている機械は、かなりの旧式のもので現在販売されているものは外観はほとんど同じでも基板が全く違うのだ。


 結局のところ、修理をするということになりこの問題は解決に向かおうとしている。

 同僚たちとは修理するんじゃなくて新品を2台、買って欲しいよな・・・・、と話をしていたのだが。


 それと、昨日、実験の作業がうまく行かず、なぜうまく聞かなかったのか悩み、夜にはメガネが壊れ、そして今日も作業がうまく行かず、呪われているんじゃないかと思ってしまった。

 同僚たちには、”休暇を取って神社に行ってお払いしてもらってくるからな!” と言った。すると、同僚たちは”どうぞ!!” と言ってくれたが、お払いの意味が正確に伝わったかどうかは不明。

 それと、今日の作業がうまく行かなかったあと、この機械専用の部品を袋から出してリトライをする準備をしていたのだが、その部品についているべき小さな部品が付いていなかった・・・・・・・・・。

 他の新品の部品を確認してみるとすべてちゃんとその小さな部品が付いている・・・・・・・・。

 もう、怖くなってしまった・・・・・・。

 これは呪われているに違いない。呪いとか運だとかなんて非科学的なことは普段は全く信じていないが、これだけいろんなことが自分の周りで起きると・・・・・・、怖くなってくる。

 そして、同僚にこう話をした。

 ”日本で、私が小さかった頃、不運なことが続いているときに、誰かの体を触るとその不運がうつるって思っていたんだよ” と。そして、その同僚の肩をたたいた。

 すると、その直後、その同僚がはさみを使っていると、なんと!ぽきっとはさみがありえない場所で折れてしまった・・・・・・。

 同僚も”今なら、アルマダさんが言っていたことが本当なんじゃないかと思えますよ”と・・・・・・。


 そして、同僚たちは帰宅した。私はこの機械がこのような不具合を起こした場合、どのような影響が実際に出ているのかを確認するための”自主的”実験を始めた。当然、”自主的”なので賃金を請求するつもりはない。

 そして、その自主的実験を終え、データを解析してラボを出たら誰もいなかった・・・・・・・。

 人気の無い廊下を歩き、休憩室で顔を洗っていると、後ろから男性の声がする・・・・・・・・・。小さな優しい声で Hi と私に呼びかけている・・・・・・・・。

 きゃーーーー!!! と叫びたかったが、ゆっくりと振り向くと、大ボスだった。

 そして、こう言われた。

 ”今日は不運だったね・・・・”

 そして、”そうなんですよ! ご存知のように途中まではここ数年では最高の結果が得られていたのに!!! あの機械が不調だったおかげで!!” と話をしたら・・・・・。

 大ボスがとても素敵な笑顔で、

 ”こんな日もあるよね、今日はお疲れ様、ありがとう” と。


 彼の素敵な笑顔に救われた気分だった。やっぱり、この巨大研究所の教授をしているだけのことはあるな、と思ったのだった。

 でも、大ボスはこうも言っていた。

 ”業者の彼が、部品を全て明日のうちに交換してくれるって言っているから”

 なにーーーー、部品を全部交換!!!

 だったら新品を買ってくれー!!!!!

 昨日と今日で、この機械の不調のおかげで数百万円の実験費用と我々の労力が無駄になったんだぞー!!!!

 巨額のグラントと寄付金があっても、どうやら話を聞くと、新しい機材を買うのは容易ではないらしい・・・・・・。


 そして、朝から12時間ぶっ続けで働き、外に出てみると当然真っ暗。そして郵便局も当然しまっていた・・・・・。