送別
3月28日、晴れ
春。
今朝の外気温11℃。
春です。
梅が咲いている。
ごく一部で桜も咲いていた。
先日、自転車のチェーンを交換したおかげで通勤が快適になった。
さて、表題の件。
3月。
アメリカでは3月ってのはあんまり意味のある月ではないのだけれど、日本では年度末で、転勤の季節である。
若い医師達が何人も今月でうちの病院を退職し更なるキャリアアップの為に他の病院へと異動していく。
別れの季節。
今月は大規模な送別会が3件あったのだが、そのうち出席出来たのは1回だけだった・・・。
残りの2回はことごとく緊急手術が入って参加出来ず・・・。
ああ、外科医。おー、外科医。
今、外科で研修をしてくれている研修医がいる。
彼も今月いっぱいで退職する。
先日、”有給休暇を全部とってからやめていけ!!!” と言ったのだが、結局、今日まで働いていた・・・。
結局、有休をほとんどすべて残した状態での退職となった・・・。
あほちゃうか・・・。と思うのは、アメリカで生活していた私だけだろうか・・・。
こんな彼のがんばりも亡国につながる一つの要因となると私は考えてしまう訳だ。
当院では研修医は月20時間の時間外労働賃金の請求が認められているが、それ以上はいくら働いても賃金は支払われない(もっとも、私が研修医をしていたころは時間外労働をいくらやっても賃金は一銭も支払われなかったのでまだましかもしれない)。
そう、病院側にとっては最も都合の良い労働力である。20時間なんて時間外労働は1週間も立たぬ間に使い切るので、それ以降はいくら時間外に働かせても金を支払う必要がない。
ちなみに、この時間外労働賃金の支払いを20時間に制限しているのは明確な労働基準法違反である。
福祉国家亡国論を強く訴える理由の一つがここにもあるのだ。
高福祉、高度医療を低負担で享受出来るようになってしまったこの国の国民。
もはや医療に対するありがたみは薄れ、コンビニ程度にしか感じぬ愚民がなんと多い事か。
そして自己管理、自己責任を忘れ国家に寄生し、そしてその愚民のご機嫌を取る為に日本国政府は低負担を継続し、そのしわ寄せを医療現場に負わせている。
もう、この日本には”働かざるもの食うべからず”って格言は存在しないのか・・・。
働かざるもの、生保(生活保護)になって無料で医療を受けましょうって状態です・・・。
なんであんなに元気なのに生保なんだろう・・・、って思う事が良くあります。
日々思う。
外科医ってのは凄い事をしているなと。
毎日、当たり前のように手術をこなし、患者はあっという間に元気になって退院してく。
しかし、ふと考えてみるとこの私たちの技量が発展途上国並みならば、この私の目の前に麻酔をかけられ横たわっている患者は術後、合併症を起こし死ぬかもしれぬ。治せる癌が、へたくそな手術で治らぬかもしれんのだよな。
当たり前のように世界最高の手術をしていると、その手術が世界最高である事さえ忘れてしまう。
そして、それにふさわしい経済面での待遇は一切、なされていない。
だって、時給約3000円だよ・・・。
こんなふざけた国で、外科医を目指しその身を粉にし、家族を犠牲にして働いてくれた若き研修医の彼に感謝したい。
ありがとう。
君の未来が輝かしい物になるように、私たちおっさん外科医も出来る事、やるべき事を一つ一つしていきます。
残念ながら私の技能を伝授する機会がほとんどありませんでしたが、後期研修を終えたら、もしよかったらうちの病院に帰って来てください。その時は私が諸先輩から受け継いだ技能、自分で考えだした工夫の数々をすべて君に伝えます。
そして、がんばるなよ。
君の頑張りは、決して良い結果には結びつかない。がんばりが亡国へとつながる危険がある事を認識し、近い将来、高度な技能と豊富な知識、そして熱い魂を有する超専門家である事に誇りを持ち、自己主張をする外科医になってこの国をかえてください。
それでは!!!!! 元気でな!!!!!