修羅場
6月1日、晴れ
やっと今週も終わった。
この一週間が無事終わった事を神に感謝する。
神???
私はキリスト教徒でもない。
何を神と信じるのか・・・。
分からない・・・。
でも私の心の中には確かに神がいる。
我が血族は、仏教か神道か?
知らねえな。
こんど父に確認しておこう。
この仕事、外科医。
幾多の修羅場をくぐり抜けここまでやって来た。
そしてその修羅場は毎週のようにやってくる。
目の前にあるその命を救うか、失うか・・・。
命がこの手の中にある。
最高の緊張感。
自分がこの命を預かる。
その責任、使命、重圧。
それが外科医の人生。
そんなとき、理性を失い周りに当たり散らす外科医がいる。
最低だな・・・。
すべてはこの手のもとに。
おのれの命を燃やせ!
理性を失わず、こころは水のように澄み渡り、現状をまっすぐ見つめ、科学的考察を行い、今なすべき事、最善を尽くす。
これが本来の外科医の姿。
不思議なほどに冷静だ。
若い頃はこんなとき、舞い上がっていた事もあったよな・・・。
でも今はもう、おっさん。
自分でも不思議なほどに感情がぶれない、思考も落ち着いている。
人の命を扱うこの仕事。
修羅場を乗り越え、患者の命をこの世に繋ぎ止める。
うまくいった。
あの葛藤に満ちた手術を完遂し患者は何事も無かったように経過良好で退院して行く。
病棟の看護師はそんな事は知らない。
自分で言うのもなんだが、私の手術は術後合併症が極めて少ない。
なぜか?
それは術前に綿密にプランを練り上げ、そして術中にこの命を燃やし、集中力を保ち最善を尽くすからに他ならない。
そう、これぞ大和魂。
そんな命を削るような生活をしていると、何でも無いような普通の生活でさえありがたく思える。
妻がいて、三姉妹がいて、住む家があり、食べ物があり、着る服がある。
この体は動き、自転車に乗れ、手術ができて、患者は救われ、俺は命を燃やす事が出来る。
そんな毎日が、とても貴重で、とてもありがたい。
そんな事を考えるとき、普段は意識しない神という存在に心から感謝している自分に気がつく。
それでは皆さん、良い週末を。
あれ??? 今週末も当直???
マジかよ・・・。