なぜ、気がつかぬ。この狂った日本の医療の異常さに。

 12月5日、晴れ

 私の目の前に広がるこの日本という国。

 その姿はまるで、”沈み行く泥舟に健康な人々がなぜか笑顔で乗っている。その先行きを本気で案じることもなく”

 自分の乗っている船が泥舟であることに気がつきさえすれば、死にものぐるいでがむしゃらにその船を丈夫なものにしようとその身を犠牲にしてでも努力するだろうに。

 手厚い社会保障制度にその身も心も預けきった人々は、そのことに気がつかない。


 いくつかの例を挙げて説明しよう。


 実はその抗がん剤は、アメリカではFDAが一度は認可したものの”とある癌に対しては”OSの延長効果がないことが分かり、早々に承認を取り消した抗がん剤である(OSとはoverall survival、全生存期間のことで、OSの延長効果がないということは、その抗がん剤を使っても延命効果がないということになる)。

 それは1年間使用すれば、全額自腹だった場合数百万円もかかるような薬である。

 しかし、日本では厚労省が認可したまま、保険診療で使うことが出来る。

 そして、超高額の薬なので、日本では当然の様に高額療養費制度の適応となり、

 70歳未満の一般所得者(被保険者の標準報酬月額が53万円未満):(10割相当医療費-267,000円)×1%+80,100円

 例えば、1ヶ月100万円の治療を受けた場合、支払う必要があるのはたったの87430円

 70歳以上の場合、一般所得者で44400円ぽっきり。低所得者で24600円もしくは15000円ぽっきり。

 年間で計算したら、1200万円の治療を70歳未満の一般所得者で1,049,160円。

 70歳以上の場合、一般所得者で532,800円、低所得者で295,200円もしくは180,000円。


 ・・・・・・、1200万円の治療をたったの180,000円で???????


 何が言いたいかお分かりだろうか?

 年間1200万円かかるような治療を受けた場合、その1200万円のうち1000万円以上を保険が補うのである。

 そして、その保険の財源の約半分が税金である。

 そう、その患者に血税が約500万円、つぎ込まれるのである。


 さて、タイトルの件についての例を示そう。

 上記の”とある抗がん剤”。製薬メーカーはしきりに担癌患者に使ってはどうかと提案してくる。




 そのとある抗がん剤の話をすると某製薬メーカーバッシングになってしまうのでやめておいて、他の業者の話をしましょう。

 効果があるのかないのか分からぬその薬(もしくは医療材料)。

 その業者の営業の話。

 ”この薬(もしくは医療材料)はこんな使い方もあります”

 ”納入価格が数十万円ですので、使っていただけたら病院様にとって1件あたり数千円のプラスになります。”

 ”患者様の自己負担額は3割で計算しますと数万円になり、患者様の自己負担額が高額になるかとお考えかもしれませんが、実際は高額療養費制度の適応になる額ですので、追加で発生する自己負担額は数百円です。ですのでぜひお使いください”

 こんな説明を聞いて日本のナイーブな医者はどう反応したか・・・。

 ”そうか! 使ったら数千円儲かるし使おうよ! それに患者さんは数百円しか払わなくても良いんだしな!”

 ・・・・・・・・・・・。

 効果が期待できるかどうかも分からぬのに・・・。

 そして、使うことで1件あたり数十万円の血税が無駄になり、業者の儲けになってしまうというのに・・・。

 そして、その狂った日本の社会保障制度がさらにこの国を滅ぼすことになるというのに・・・。

 そこまで考えてますか???

 それとも、あくまでも目先の利益を追求しますか???



 そう、やめましょうよ。高額療養費制度。

 悪い制度ではないんだけれど、少子高齢化社会においてはこの制度はすでに破綻しているし、それがこの国を滅ぼす要因の一つになることは間違いないんだから。そして、業者が金儲けをする為の免罪符になってしまっているんだから。

 こんなことを言うと、弱者切り捨てか!!! なんてことをおっしゃる方がいるでしょう。

 でもね、そもそもこの高額療養費制度の存在自体が異常なんですよ。

 あなたの払った血税が、こんな形で無駄になってるって知ってましたか?