看護師さんに反対された日

 7月16日、晴れ?

 さて、一瞬だけ激流が穏やかになったかと思った仕事。

 甘かった・・・。

 世の中そんなに甘くない・・・。

 怒濤の外来。

 朝、外来を始める。

 ずらーっと並べられた、患者ファイル・・・・。

 え????? こんなに予約入ってたか??????

 え????????? 飛び込みの初診患者がOO人?????????

 あああああ、そうですか。

 さて、心を静かに落ち着けて、いつ外来が終わるか? なんて無意味な事は考えるのをやめて、一人一人の患者さんの診療を開始する。

 トイレに行こうかなんて全く思わない。

 お腹がすいたなんて感じる余裕も無い。

 ぶっ続けで働いて午後1時、外来看護師さんとクラークさんが外来を止めてくれた。

 ”今のうちにお昼に行って来てください”

 15分でお昼ご飯を食べて5分でトイレ休憩と歯磨きを済ませて、何の迷いもためらいも無く、外来へ戻る。

 げ、部長はまだ外来を続けている。

 え!!!、お昼ご飯食べずに続けるおつもりか?????。このいつ終わるか全く予測不可能な外来を・・・。


 ちなみに部長外来には看護師さん、秘書さん、クラークさんの3人体制でアシストが入る。

 私の外来は看護師さんのみ。

 いや、看護師さんが常についてくれているだけでも非常に助かる。

 でも、最近、秘書さんに言われる。

 ”先生の外来にも秘書が必要よね”

 ”頼む、お願い、そうしてください”


 とにかくリスクマネージメントが極めて重要でかつ困難である事を痛感する。

 忙しすぎて、細かいころに目が届かなくなってきそうで怖い。

 この仕事、くだらないミスでも患者さんにとっては命取りになりかねない。

 今、自分で出来る範囲で、外来業務の効率化を工夫してやっているが、それも限界があるからなあ。

 沢山の患者さんの診療を行って、自分としては精一杯やっていたとしても、1回のミスで患者さんに不利益を与えるような事になれば、そのすべてが高評価の対象から一転して批判の対象になってしまう。

 その覚悟と緊張感でやせるやせる。

 ダイエットに苦心する肥満気味の外科医がいるなんて、あんたほんとに外科医か? って思うよ。

 やせて体力を落とさないように、しっかりと食べ、休日は体を動かす。

 ああ、これほど仕事中心の生活って、研修医の時以来かな。

 あ、そういえば、研修医もこの病院でだったな・・・・・。

 あの頃も凄かった。

 生まれたての長女。

 その育児は99%、妻に丸投げ。

 帰宅するのは毎晩、午前1時や2時。

 夜泣きで起こされるのが辛すぎて、家庭内別居。

 ほぼ、母子家庭だったな。

 今と違って、研修医の給料は少なかったな・・・。





 さて、タイトルの件。

 外来中に目が回る忙しさでつい言ってしまった一言。

 ”こんなに仕事が多くて、患者さんを何時間も待たせてしまうって良くないよ。もう一診立てよう(=あと一人医者を外来に出して診察させよう)。そうしないとまずいよ。”

 って・・・・・・。

 いつも激務につきあってくれている穏やかな看護師さんが、口を開いた。

 看護師さん ”先生、それ間違ってるわ。やめてこれ以上。先生が増えても看護師は増えへんかったらどうなると思ってるの?”

 ガツンと来ました。

 ははああああ、申し訳ございません。

 出しゃばった事を申し上げました。

 反省。

 やっぱり私に出来るのは、最大限の努力のみ。

 患者さんやご家族に ”こんなにお待たせしてスミマせん。もっと頑張りますので。申し訳ない。” とまず謝罪。

 うん、ここは日本だ。

 でもね、ほとんどの患者さんが、笑顔で労をねぎらってくださいます。

 謝罪と感謝。

 そんな日々。

 そして、午後6時。外来業務がお開きとなりました。

 でも、隣の部長はまだ5人ぐらい患者さんが残っていた・・・・・。

 すんません、部長。

 お先に病棟回診に行って参ります。



 改めて思う。

 この仕事は、外科医って仕事は本来、先輩外科医、後輩外科医、各医療スタッフ、そして家族に支えられて成り立っている。

 そして、患者さんの応援もあって成り立っている。

 この激務がそれを教えてくれる。