有給休暇を使いきれ!!!

 2月1日、雨

 さて、2月になりました。

 1月に私についてくれていた研修医の先生も次の科の研修に行き、いつも通りひとりぽっちになりました。まあ、後期研修医もいるし頼もしい先輩もいる訳で寂しがる理由は無いのですが、常に一緒にいてくれた研修医がいなくなるとさみしいものです。


 さて、今朝、いつも通りに出勤。

 走り出して5分ほどするとパラパラと雨が降り始める。

 そして、激しく雨が降り始めました。

 冬の雨・・・・・。

 この獄寒ミネソタ帰りの体には寒くは感じない無いのだけれど、マンホールの上などを通過する時には落車しないように細心の注意を払う訳で、少々疲れます。


 さて、表題の件。

 今日は2年目の研修医の先生と一緒に仕事をしていて、昼食の時間となりました。そこでいろいろと話をしたわけです。

 彼はこの春から別の病院に勤務する事が決まっているので、今年の4月1日には別の病院にて勤務する訳です。

 とてもまじめな彼は2年間の勤務で有給休暇をほとんど使用しておらず、20日ぐらいの有給休暇が残っています。正月の三ヶ日にも一銭も給料をもらえないのに働いていました。

 そこで ”3月中旬から3週間ぐらい休暇を取れよ。20日分ぐらい有給休暇が残っているだろ。” というと・・・。

 研修医 ”そんなことできませんよ。なんだか後ろめたいような気分になってこの場を去るのは辛いです・・・。” とな・・・・・。

 20日有給休暇が残っていればまるまる1ヶ月休暇がとれるというのに・・・。

 アメリカで働く医師なんか当たり前のように有給休暇をどうどうと使って1ヶ月ぐらい連続して休んでいるというのに・・・。

 ああ、日本。おー、日本。

 馬鹿野郎ばっかりです。

 私 ”何が後ろめたいだよ。そういう契約になってるだろ。だったら堂々とその権利を行使したら良いんだよ。”

 研修医 ”よその病院ではそうして退職前に有給休暇を使って長期間休む事が出来る病院もありますけど、うちでは誰もしてませんよ。”

 私 ”だったら、君から始めたら良いんだよ。この世界を君が変えろよ。俺は応援してやる。そう! 世界を変えるんだよ!!!”

 研修医 ”でも・・・、出来ませんよ。申し訳なくて・・・。”

 私 ”まあ難しいかもしれないな。私は賛成しても、部長や他の副部長はどう思うか分からないしな・・・。でも、ぜひやってみてくれ。”

 研修医 ”無理ですよ・・・。”


 実のところ、私もこれまでいくつかの病院を渡り歩いて働いて来たが有給休暇を使い切った事は一度も無かった。むしろたった3日程度の休みを得て引っ越しをしてすぐに次の病院での勤務を始めていた。

 そう、我々日本で働く医師は、あらゆる物を犠牲にして同胞達の命を救う為に献身的に働いている。

 忘れてもらっちゃ困るんだが、我々外科医は高度な技量と知識を持つ超専門職なんだよ。


 一方、アメリカ。

 昨年の春にミネソタ大学を退職した訳だが、様々なやり取りがあった。

 私は有給休暇がフルに残っていたので契約期限の1ヶ月前からフルに有給を使うからと中ボスにいうと大ボスや同僚達が大慌てで私をこう説得した。

 ”なんとか帰国するまで働いて欲しい。今の仕事を終える為には君が必要不可欠なんだ。有給休暇を使えなかった分は給料を支給するので、納得して欲しい。”

 そう、アメリカでは退職時に使い切っていない有給休暇にたいして正当な賃金が支払われる。よって、私は帰国直前まで働いた結果、有給休暇分の数千ドルの支払いを受けたのだった。


 一方、日本。

 使わなかった有給休暇に対して賃金は支払われない。

 そう、働き損な訳だ。

 休もうが働こうが手にする給与は変わらない。

 でも、働く訳だ。

 医は仁術ってわけか???

 結局のところこの献身的働きぶりを日本政府や愚民にうまいこと利用されているだけなのにな。

 今の日本の医療は医療従事者に”献身”を強要し、それに依存して成り立っている。

 もういいかげんやめないか?

 そんな状態。

 献身的に働いた結果が、医療のコンビニ化だぞ!!!!!

 愚かな国民は、井の中の蛙達は、そのありがたみも忘れ世界最高の医療を格安の自己負担で当然のように享受している。

 そんな事を考えていると無性に腹が立ってきて最後に研修医にこう言ってしまった。

 ”ばかやろう!!! 有給を使い切ってやめていけ!!!”