育児生活2日目

 1月30日、ミネソタ晴れ

 スカッと晴れていてとても気持ちの良い日。最高気温-8℃、最低気温-18℃なので温かくは無い。

 今朝は長女はチーズオムレツ、次女はスクランブルエッグをオーダー。自分流で作ったがまずまずの高得点をゲット。

 チーズオムレツはどうも妻は柔らかめに作るらしい。私は火を通すのでやや固め。それでもおいしいとの評価であった。

 子供たちが食器を洗い。子供たちと一緒に洗濯物をたたむ。

 うちのアパートには食器洗い乾燥機がついているが性能が非常に悪い為、まず手洗いして、その後食洗機に入れて洗っている。そうしないとご飯粒とか食器の隅の油汚れなんかが落ちない。

 昼食はピザを焼いたが、不評だった。娘たちはご飯をこよなく愛しているため、ピザは食べるが好きではないらしい。

 昼食を済ませ、妻と三女の入院する病院へと向かった。

 妻は術後2日目だが、ベッドからの離床もすみやかでシャワーも浴びることが出来た。なぜならば、疼痛管理(ペインコントロール)が非常に良くできているからだ。現在投与を受けているのはIbuprofenイブプロフェン)とPercocet(パーコセット)。イブプロフェンは日本でもおなじみだが、NSAID(非ステロイド抗炎症薬)に分類される薬で店頭でも購入できる一般的な薬。一方、パーコセットは日本では聞いたことがない薬。パーコセット=アセトアミノフェンオキシコドン、である。

 さて、パーコセットは知らなくても、アセトアミノフェンオキシコドンを知らない医者は日本にはいない。いずれも臨床で良く用いる薬だ。アセトアミノフェンはアルピニー、カロナールなどの商品名で発売されていてインフルエンザのときも安全に使用できるといわれているので良くこの季節は処方していた。一方、オキシコドン、これは商品名オキシコンチン、私は良く癌性疼痛の患者さんに処方していた。モルヒネよりも副作用が少ないと言われていて良く使っていた。

日本ではオキシコンチン
効能又は効果: 中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛
となっていて癌から来る疼痛の緩和に用いられている。それがアメリカでは術後の疼痛管理にも用いられている。

 妻はパーコセットを定期的に内服し、イブプロフェンをレスキューとして使用している。これは非常に理にかなっている。アメリカの術後疼痛管理は日本よりも進んでいると思う。私も術後の疼痛管理や癌性疼痛の管理を長年やってきたが、普通の術後の患者にオキシコンチンを処方したことは一度も無い。経口摂取が出来る人にはロキソニンボルタレン、出来ない人には筋肉注射や静注薬での疼痛緩和を図ってきた。当然、硬膜外麻酔を麻酔科の医師に管理してもらっていたことがほとんどであったが。
 アメリカで行っている帝王切開後の疼痛管理(ペインコントロール)は私が日本で行っていた癌患者に対する疼痛管理と全く同じと言っていい。逆に言えばそれほど強烈な疼痛管理を帝王切開後の患者にも行っているということだ。おかげで妻は非常に顔色が良い。
 しかし、投与されているアセトアミノフェンオキシコドンイブプロフェンは絶対に安全な薬ではない。アセトアミノフェンは肝不全をきたすこともある。オキシコドンは薬物中毒(オキシコドン依存症)になる人もいる。イブプロフェンは消化管潰瘍になることがある。
 日本はどちらかといえば、こういった副作用を非常に恐れる国民性がある。なので薬物の使用はなるべく控えようと考える人が多い。アメリカはそうではないように思う。アメリカの医者に以前、”この薬の副作用はどう思いますか?” と尋ねたことがある。そうしたら”super safe” との返事だった。そう?かい? って思ったけれど、日本のようにあれこれ起きる確率の非常に少ない副作用まで事細かに説明しないといけないような現場と比較すると、いっそのことsuper safeと笑顔で言われたほうが気持ちが良かったりもする。
 いずれにしもてこの妻に対するペインコントロールアメリカでは帝王切開後の妊婦に対する極一般的な内容であり、妻も私も非常に満足している。


 アメリカに暮らしていると思うこと。

 あれこれ心配して過ごすよりも、ポジティブかつ慎重に物事を考えて過ごしたほうがよっぽど楽しい。

 日本人の几帳面で心配性な性格のままアメリカで過ごすとすぐに病んでしまうと思う。


 明日は妻と三女が退院し帰宅する。

 「受け入れ準備は出来ていますのでいつでもどうぞ、先生」

 って日本ではよく言っていたっけな。

 明日は自分で迎えに行くんだけどね。



 ちなみにこれが本日、術後2日目の妻の病院食(夕食)
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 決して豪華な内容ではないけれど、術後2日目でちゃんとこうして食事が摂れている妻の姿を見ているとなんだか泣きそうになってきた。外科医としてはとても勇敢だと自分では思っているけれど、夫としては非常に心配症でなさけない男なのかもしれない。