人の体を切り、命を救うということ 日本人外科医の人生

 7月21日、雨

 土曜日。

 そう、休日のはず・・・・・。

 しかし、深夜に病院からの緊急呼び出しがあり、病院に駆けつけた。

 そのまま一睡も出来ぬまま。

 そして夜が開け、軽快退院する受け持ち患者4人の朝回診に向かった。


 なす術無く、死亡退院する人。

 予定手術で、予定通り軽快退院する人。

 いろんな患者がいて、いろんな家族がいて、いろんな手術をしている。


 とある疾患で、重篤な状態となり、緊急手術を行ったが、完璧な手術を行っても尚術後も容態が安定せず、意識不明のまま長期間ICU管理となった患者が今日、軽快退院した。

 患者も、その家族もその表情は晴れ晴れとしている。

 ただ、患者本人は自分がどれほど重篤な状況で、死の危機が迫り、実際に死にかけ、そしてその度に家族が感じた激しい恐怖は知らぬが・・・。


 最近、患者やその家族に苦言を呈すブログ記事が多かったな。


 今日、その重篤な疾患を乗り越え軽快退院した患者の家族が発した一言をご紹介しよう。

 家族 ”先生、ほんまに有り難うございました。こんなに(元気に)していただいて。もう、あかんかと思いましたが、先生のおかげでこうして退院出来て、ほんまにおおきに。ほんまに・・・、おおきに。”

 患者 ”暑いですね。外は。先生、本当に有り難うございました。”

 と、深々と頭を下げ、我々の尽力に謝意を示してくれた。

 そう、患者は長期入院していたため、夏が来ていることを今日知ったのだ。


 貴方の家族の大切な命を救ったのは私独りではない。

 同僚の外科医達、麻酔科医達、ICU・病棟の看護士達の献身がその大切な命を救ったのだ。

 家族の死を身をもって感じた貴方と、患者自身がこれからの人生をより良きものにせんことを切に願う。

 私たちはその命を、”新たな堕落を生む為” に救ったのではない。

 命の大切さ・儚さを実感し、残された人生を日本人として美しく、逞しく生き抜いて欲しい。

 その為だったら、この身が朽ち果てようとも、たとえ過労死しようとも、この命が燃え尽きるまで、私を頼りその命を預ける患者の為、死を恐れることなく常に全力を尽くす覚悟はある。

 そう、それが日本人として、そして日本人外科医としての生き様であると信じる。


 そして、忘れてもらっちゃ困るんだよ。

 私たち日本人外科医は”世界最高”なんだよ。

 アメリカを含め、他国の外科医なんか、我々の足下にも及ばん。

 そう確信を持って言えるだけの自信と業績が我々にはある。